何かを沸騰/発酵させると液体の表面に浮き出る、「灰汁(あく)」が「SCUM(スカム)」である。スポンジ状に発泡する「表皮」は厚みを持ち、一様に無表情なまま膨らんでいく。それはまるで制御を失った細胞分裂のようである。膨張した形態に(イモの形に意味がないのと同じで)モチーフや記号的な要素は無く、ただ意味性、ストーリー性の欠落した「ボリューム」がそこにある。今回は従来のスカムが壊れて、新たな変化が起こっている様子をインスタレーションで表現する。
Scum 2005
Photo: Jordi Pla
Scum#2 2006
Photo: Keizo Kioku
混合させた発泡ポリウレタンの霧をモチーフに吹きつけると、表面の凹凸に微細なセルが付着しおおわれることで、輪郭やテクスチャーは鈍磨していく。この表皮の柔毛「Villus(ヴィラス)」が伸び続けると、そのものの固有性は消え去り、意味や概念が薄まり、だんだんと不定形の「SCUM(スカム)」へと近づいていく。「Villus」は東京・銀座、「Villus#2」はバングラデシュのダッカという全く異なった環境で発表され、それらがひとつの軸線上に展示される。
Villus#2 2010
Photo: Nobutada Omote