Works 展示作品
池田の活動を大きく「光=視覚」と「音=聴覚」のふたつに分け、インスタレーション作品を主に展示します。
大規模な映像作品を中心としたブラックキューブの展示空間と、新作のサウンド・インスタレーションが登場するホワイトキューブの展示空間を対比的に展開させます。
知性と感性の挟間、新たな鑑賞体験へ
0と1の組み合せによって制御されるコンピュータのプログラムを介して、数学的な無秩序と秩序が隣り合わせになっている世界の姿が提示されます。しかし、どれも難解な数式の知識や理解を必要とするものではなく、すべての作品が音と光という素材によって、身体的な体験として感じ取られる空間的な展示になります。
[1F展示室]
datamatics(データマティクス) インスタレーション・シリーズ
- the transcendental (π) [n°1-a] (ザ トランセンデンタル)
- data.matrix [n°1-10] (データ・マトリックス)
- data.tron [3 SXGA+ version] (データ・トロン)
- data.film [n°1-a] (データ・フィルム)
一直線上にいくつの点があるか?
数の数とは何か?
いかにしてランダムなものを真にランダムであると検証できるか?
このような問いを身体的・数学的に探求し、かつ、われわれの世界に広がる不可視で多様な実体性をもつ「データ」を知覚するポテンシャルについて探究するアート・プロジェクトdatamatics(データマティクス)から、3つの大型インスタレーション作品が展示されます。鑑賞者は、0と1の間に広がる無限の中で、膨大なデータの宇宙を体験することになるでしょう。
大型オーディオ・ヴィジュアル・インスタレーション作品data.tron(データ・トロン)は、そのすべてのピクセルが数学的原理によって厳密に計算され、純粋数学や我々の世界に存在する膨大なデータの組み合わせによって構成された映像を超高速で映し出します。巨大な画面と対峙することによって、鑑賞者の知覚は最大限にまで高められ、自身の存在や身体全体が作品の中に没入することになります。
data.tron [8K enhanced version]
© ryoji ikeda 2008
Commissioned by Ars Electronica Centre, Linz AT
Photo: Liz Hingley
[参考図版]
data.film [n°1-a]
© ryoji ikeda 2008
写真:福永一夫
写真提供:山口情報芸術センター(YCAM)
[参考図版]
[B2F展示室]
the irreducible (ジ イリデュシブル) | matrix (マトリックス)
- the transcendental (e) [n°2-a] (ザ トランセンデンタル)
- the transcendental (e) [n°2-b]
- the irreducible [n°1-10] (ジ イリデュシブル)
- matrix [5ch version] (マトリックス)
the irreducible(ジ イリデュシブル)は、2008年パリのLe Laboratoire(ル ラボラトワール)で行われた、数学者とのプロジェクト「V≠L(ヴィ イズ ノット イコール トゥ エル)」の一環のもので、ここでは純粋数学において論じ続けられている「infinity(無限)」をテーマとしています。10枚のデジタルフォトプリントにはそれ以上還元できない1452384桁数で構成された数字がプリントされています。真にランダムであることが数学的に決して知り得ない膨大な数字が拡がる漆黒の宇宙を、10個の窓から垣間見ることを通して、人間の知性の限界と閾値そのものと対峙する作品です。
matrix(マトリックス)は、建築空間・劇場・コンテナ・無響室などでサウンド・インスタレーションとして形式を変えながら継続して展開されている作品です。本展では、大規模な野外コンサートやスタジアムの遠方投射に使用される超指向性のパラボラ型スピーカー5台から放射される最も純粋な音(正弦波)が、それぞれ完全に拮抗するような音場が設計されます。鑑賞者は、その不可視の音のグリッドの中で、自らの身体がそのグリッド自体と干渉することによって生じる、極めてパーソナルな知覚体験を得ることになります。
a prime number
© ryoji ikeda 2008
Photo: Marc Domage
[参考図版]
spectra [for Terminal 5, JFK]
© ryoji ikeda 2004
Photo: Dean Kaufman
(courtesy of Forma Arts and Media)
[参考図版]