展覧会概要
「Cell」という概念をもとに、先鋭的な彫刻・空間表現を展開する名和晃平(1975年生まれ)の個展を開催します。
名和はビーズやプリズム、発泡ポリウレタン、シリコーンオイルなど流動的な素材・メディアを情報社会における感覚や思考のメタファーとして扱い、デジタルとアナログの間を揺れ動く身体と知覚、感性のリアリティを表現しています。本展では、国内外での多数の受賞・発表をふまえ、パラレルに姿を変える名和作品の根幹を各カテゴリーの方向性や相互の関係から探り、そこにかいま見える今後の姿を追求します。 BEADS / PRISM / LIQUID / GLUE / SCUM / DRAWINGなどのカテゴリーに新たな展開を加え、音楽やファッション、プロダクトデザイン領域とのコラボレーション、パブリックアート、プロジェクトチームによる制作などを通して、国際的に活躍する作品世界の魅力が紹介されます。また、手法そのものの開発からスタートする表現スタイルなど、名和作品の多義的な創作のありかたを探ることによって、そのすぐれた造形性、表現の拡がりや可能性を呈示します。
名和は「映像の細胞PixCell=Pixel(画素)+Cell(細胞・器)」という概念を通して、感性と物質の交流の中から生じてくるイメージを追求しています。彼は自らを「彫刻家」としながらも、私たちが、感性と物質を繋ぐインターフェイスである「表皮」の質を通して対象をリアルに感知・認識していることに注目し、その表現領域をさらに拡げつつあります。本展は、その卓越した表現力の源とは何か、そして次世代の創作のあり方について考える貴重な機会となるでしょう。
展覧会のみどころ
公立館初の大規模個展
名和は京都市立芸術大学彫刻専攻に在学中、英国王立美術院(Royal College of Art)に学び、2003年には博士論文「感性と表皮…現代彫刻における一方法論」によって学位を取得しました。在学中、早期から国内外で意欲的な活動をスタートし、多数の発表・受賞を積み重ねてきた若手作家の旗手として、待望の大規模な個展が開催されます。
空間・光、回遊型の展示デザイン
地下2 階企画展示室とアトリウムの空間全体に、小さなオブジェから大型作品まで、多数の作品群がダイナミックに展開されます。展示は、カテゴリーごとに個性を持つ空間を繰り返し回遊できる構造になっています。来館者は、キャプションや解説を極力省いた作品空間を何度も巡りながら、シリーズの相互関係やその根幹について、思索にふけることができます。また、従来は個々のカテゴリーが独立した存在として展開されていましたが、今回はそれぞれのカテゴリーをつなぐ通過点としての「変容する造形」など、展示室に満ちたその作品世界全体を目にし、体感することができます。
多様なコラボレーション・作品集刊行
会期スタート後に、美しいビジュアルや写真記録、作家自身のテキスト・論考、ドキュメント・資料データ等を収録し、本展公式カタログとして、初期の名和晃平の定本といえる作品集の刊行が予定されています。さらに、本展への展示支援の試みとして、研究機関との連携によって開発された展示手法も試行されます。会期中に開催されるイベント(*詳細は当館HP でご確認ください)とあわせて、多義的に展開される作品世界を体験してみましょう。