「驚くべきリアル」展
スペイン、ラテンアメリカの現代アート‐MUSACコレクション‐慶長遣欧使節団派遣400周年を記念し、2013年および2014年には、「日本スペイン交流400周年事業」として、様々な催しが行われています。その一環として当館では、スペインの90年代以降の作品にフォーカスしたカスティーリャ・イ・レオン現代美術館(MUSAC)のコレクションから「驚くべきリアル」をテーマに27作家の作品を紹介します。
スペインにおいては17世紀以降、ベラスケスやゴヤなど、リアリズムの系譜があり、80年代以降のアントニオ・ロペス・ガルシアに代表されるマドリード・リアリズムに継承されています。スペイン芸術のリアルは対象が精密に再現されているという描画上の特質を意味するのではなく、スペインの作家のリアルに対する執着の仕方から来ています。そのリアルは超自然なもの、幻想的なものまでを、日々の身の回りのものが手で触れられるのと同様に、地上に引き下ろして対話しようとする欲望から来ています。しばしばその表現は日常的な光景やモノの「誇張」(esperpento)という形でみることができます。その「誇張」は生と死との独特の緊張関係から生まれてくるといえるでしょう。「スペインでは、他のどの国よりも死者が生き生きとしている」という、詩人ガルシア・ロルカの言葉のように、死は生よりも活気をもっています。本展の出品作品には、アクティヴェイト(活性化)された死に裏付けられた重い生が、リアリズムとして表現されています。展覧会にはラテンアメリカの作家の作品も含まれており、それ自体が驚くべき特異性をもった中南米のトロピカルな風土の中で、スペイン的なリアルの感覚がどのように変容し、発酵していったかを見せていきます。
展覧会のみどころ
人間の生と死を深く掘り下げてきたスペイン絵画のリアリズムを受け継いだ現代の絵画
絵画だけが描く事のできる現代人の「リアル」がここにある。孤独、疎外、アイデンティティの追求、愛と憎しみ、生きる事の喜びと葛藤、暴力、深思。社会、政治問題もふくんだ現在に生きる事のドラマのすべて。
驚くべきイマジネーションの飛翔
ダリを生んだこの国が放つ魔術的な世界の変容や信じられないイマジネーションの世界を紹介する。家の中の家具がすべて真っ二つに切断された部屋、馬に乗り大学の建物内を闊歩するビジネススーツの紳士、天の星座が地上にそのまま転写されたかのような光景―。ラテンアメリカの魔術的感覚とスペインの想像力の幸福な結婚の成果。
表現の多様性
ヴィデオ、空間インスタレーション、絵画、彫刻と眼を見張るほどの表現の多様性。寡黙な絵画の上に流れるゆったりとした時間からドキュメントと見まごう映像の過激なスピード感まで、緩急豊かなメディアによって産み出されるとても刺激的な鑑賞体験。
日西交流400周年事業
2013年6月から2014年7月まで、スペインへ向けた慶長遣欧使節団派遣400周年を記念し「日本スペイン交流400周年事業」が開催されます。東京都現代美術館では「驚くべきリアル」展と題し、カスティーリャ・イ・レオン現代美術館(MUSAC)の珠玉のコレクションの中からラテン・アメリカを含むスペイン語圏の作家の作品約50点をお見せします。
カスティーリャ・イ・レオン現代美術館は、2005年にスペイン北西部のレオン州県都、レオン市に誕生し、「"現在"のミュージアム」になることを目指して、時代を映す現代美術を精力的に集めてきました。東京とレオン市、2つの場所で「現在」を見つめる美術館同士のコラボレーションによって、地理的・文化的距離を超え、異なる思考が出会うプラットフォームが形成されることを目指します。
「驚くべきリアル」展は、下記条件において写真撮影可です。
- フラッシュ、三脚を使用しての写真撮影はご遠慮願います。
- 撮影した写真を営利目的で使用することを禁じます。
- 撮影は写真に限ります。動画の撮影はご遠慮ください。
- 他の来館者を撮影することはご遠慮ください。他の来館者の肖像権に触れる場合があります。
- 写真の使用に関しては、使用者の責任において取り扱うようお願いいたします。美術館および作家は一切責任を負いません。
- 取材等でのご使用の場合は、美術館にお申し出ください。
基本情報
- 主催
公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館、カスティーリャ・イ・レオン現代美術館、Acción Cultural Española (AC/E, スペイン文化活動公社)
- 後援
在日スペイン大使館
- 助成
公益財団法人 野村財団
- 協力
NECディスプレイソリューションズ株式会社