MOTアニュアル2014 フラグメント

―未完のはじまり

「MOTアニュアル」は、日本の若手作家による新しい現代美術の動向を紹介するものとして、東京都現代美術館が1999年より行っているグループ展です。
第13回目となる「MOTアニュアル2014」では、「フラグメント」という言葉をキーワードにして、われわれの現実認識に新たな視点をもたらす6人/組の作家を紹介します。
"断片"や"かけら"といった小さな破片を意味する言葉――「フラグメント」。本展に登場する作家たちは、彼らの身の回りにある現実からこぼれ落ちたフラグメントを用いて、独自の世界を築いていきます。市販のプラスチックのパーツを際限なく組み合わせる、トランプカードや消しゴムに緻密な細工を施す、見慣れた風景のイメージを切り取り多層化させる・・・・・作家たちの手法は様々ですが、いずれも世界に溢れる選択肢の中から自分だけのフラグメントを意識的に選び取り、それとの接触を通して世界を捉えなおそうとする姿勢に特徴があります。
本来、不完全で脆弱な存在であるフラグメントは、どこか欠けているがゆえに見る者の想像力をかきたてるものですが、作家たちの接触が加わることにより、見る者を"ここ"からどこか別の場所へと誘ってくれるでしょう。
日々過剰に生み出される情報が錯綜し、多くの人が自らの処理能力や認知に限界を感じる今日。フラグメントを起点にした作家たちの手探りの実践は、新たな視点で世界とアクセスする手がかりをわれわれに与えてくれるのではないでしょうか。

出品作家


青田 真也|髙田 安規子・政子|パラモデル|福田 尚代|宮永 亮|吉田 夏奈
作家略歴等詳細は「アーティスト」の欄をご覧ください。

*スタッフブログでは、展覧会準備の様子や作家のプロフィールなどを随時紹介していきます。
MOTアニュアル2014ブログ

主催

公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館

助成

ブルームバーグL.P.

協力

株式会社WEST、ぺんてる株式会社、ホルベイン工業株式会社、株式会社淀川工技社、小豆島町

  • パラモデル《キソまたはウソの模型》2014 撮影:伊奈英次

  • パラモデル《未完の書物Pと、そこに溢れるパラテキストのための投影計画》2014 撮影:伊奈英次

  • 青田真也《無題》2013-14 撮影:伊奈英次

  • 髙田安規子・政子 《庭園迷路》 2010年

  • 福田尚代《残像:引き潮》2010-14 撮影:伊奈英次

  • 吉田夏奈《Face to the Green》2011 撮影:早川宏一

宮永亮《WAVY》2014撮影:伊奈英次

青田真也|Shinya AOTA

―自分と断片の間で起こること
プラスチックボトル、ガラスビンなど、われわれの日常にごく普通に ある既成品の表面をヤスリで丁寧に削ぎ落としていく青田真也。
表面の文字が消え、輪郭線や形が曖昧になり、そうして完成していく作品には、それでもなお残されている"素の形"や"モノの本質"が浮かび上がってきます。
青田の制作方法は、一見、アグレッシブにも映るかもしれませんが、作家にとっては「愛着をもって向き合う行為」であると言います。
本展では、代表作であるボトルを新たに制作し、一堂に展示。 バリエーション豊かなボトルに残された作家の痕跡を、ごく近くで鑑賞いただけます。

インタビュー(MOTアニュアル2014ブログ)

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1982年
  • 大阪府生まれ、愛知県在住
2006年
  • 京都精華大学芸術学部版画専攻卒業
2008年
  • 愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画専攻修了
-主な展覧会歴-
2008年
  • スリーパー・ギャラリー(エディンバラ、イギリス)にて個展開催、その後、青山|目黒などで個展
  • グループ展「1floor2008 -No Potato of Name-」 神戸アートビレッジセンター(兵庫)
  • グループ展「群馬青年ビエンナーレ2008」 群馬県立近代美術館(群馬)
2010年
  • グループ展「あいちトリエンナーレ2010」 長者町旧玉屋ビル(愛知)
2012年
  • グループ展「ポジション2012名古屋発現代美術-この場所から見る世界」 名古屋市美術館(愛知)

髙田 安規子・政子|Akiko& Masako TAKADA

―日常の断片から立ち現れる風景
角 砂糖、洗濯バサミ、軽石、チョーク、トランプなど安価で小型の日用品を用いて、ペルシャ絨毯や庭園、古代遺跡といったスケールも価値も全く異なるものへと 転換させる双子の姉妹。一卵性双生児としての生物学的アイデンティティを拠り所に、二人の差異・共通点を見つめ、人間が生活をする上で共通の基盤にしてい るはずの常識例えばモノの大きさの尺度、時間感覚についてわれわれの認識に問いを投げかける作品を発表しています。
本展は、これまでまとめて見る機会のなかった作家の新旧代表作に触れる貴重な機会となります。

インタビュー(MOTアニュアル2014ブログ)

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1978年
  • 東京都生まれ、東京都在住
2001年
  • (安規子)多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業
  • (政子)東京造形大学美術学部比較造形学科卒業
2005年
  • ロンドン大学スレード校美術学部修士課程修了
-主な展覧会歴-
2006年
  • グループ展「Broomberg New Contemporaries」リバプール・ビエンナーレ(イギリス)
2008年
  • Metis NL(オランダ)にて初個展「The Little Land」を開催、以降、ラディウム‐レントゲンヴェルケなどで個展
  • 第1回 世田谷区芸術アワード"飛翔"美術部門受賞
2009年
  • 個展「第1回 世田谷区芸術アワード"飛翔"受賞記念 高田安規子・政子展」世田谷美術館(東京)
2010年
  • 個展「クリテリオム 78」水戸芸術館現代美術ギャラリー(茨城)
  • グループ展「BigMinis」ボルドー現代美術館(ボルドー、フランス)
2013年
  • グループ展「セカイがハンテンし、テイク」川崎市市民ミュージアム(神奈川)

パラモデル|Paramodel

―断片と断片と断片・・・で遊ぶ。
林泰彦、中野裕介によるアートユニット。国内外で活躍を続ける彼らを一躍有名にしたのはこども用玩具の"プラレール"を使った大規模なインスタレーションでした。
ま るでこどもが既存のルールを忘れて自分だけの遊びに没頭するように、彼らはプラレール、配管パイプ、プラモデルのパーツなど、現実に販売 されている商品を、用途を超えて自在に用い、自分たちの世界(=モデル)を組み上げていきます。同じ部品が何度も繰り返し使われる反復構造は、独特のリズ ムと高揚感を生み出し、見る者に強い印象を与えますが、 一方で、同じ部品と部品をいくら合体させても、それは全体にならず、 完成形を見ることはありません。彼らの作品は、だからこそ、これからも 何かが始まりそうな永遠の「工事現場」なのです。
本展では、二人のリアルタイムの興味を反映したインスタレーションが 展示室の内外に広がります。

インタビュー(林泰彦/ MOTアニュアル2014ブログ)

インタビュー(中野裕介/ MOTアニュアル2014ブログ)

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2001年結成
林泰彦
1971年
  • 大阪府生まれ、京都府在住
2001年
  • 京都市立芸術大学美術学部美術科構想設計専攻卒業
中野裕介
1976年
  • 大阪府生まれ、大阪府在住
2002年
  • 京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻日本画修了
-主な展覧会歴-
2002年
  • ギャラリー裏窓(大阪)にて初個展「青空ランドスケープ」を開催、以降、MORI YU GALLERYなどで個展
2007年
  • グループ展「『森』としての絵画」―『絵』のなかで考える」岡崎市美術博物館(愛知)
2010年
  • 個展「パラモデルの 世界はプラモデル」西宮市大谷記念美術館(兵庫)
2011年
  • グループ展「世界制作の方法」国立国際美術館(大阪)
2012年
  • 個展「パラモデルのプラモデルはパラモデル」国際交流基金ベトナム日本文化交流センター(ハノイ、ベトナム)
  • グループ展「始発電車を待ちながら」東京ステーションギャラリー(東京)
2013年
  • 個展「パラの模型/ぼくらの空中楼閣:パラモデル」メゾンエルメス(東京)
  • グループ展「第7回 アジア・パシフィック・トリエンナーレ」ギャラリー・オブ・モダンアート(ブリスベン、オーストラリア)

福田 尚代|Naoyo FUKUDA

―世界に撒かれた断片を拾う
自 ら回文(上から読んでも下から読んでも同じ音の文章)の詩作を手掛けるなど、言葉や文字に対して独自の感覚を持ち、それを本や文具を用いての作品へと昇華 させる福田尚代。ある時は頁を丹念に折り畳む、またある時は小さな穴を無数にあけるなど繊細な関わりを持つことにより、物語性豊かなプライヴェートな世界 観を立ち上げていきます。本展においては本、消しゴム、鉛筆の芯、しおりなどを用いた近年の代表作に未発表の新作を加え、密やかな「言葉」や封印された 「時間」がひも解かれる空間をつくりあげます。

インタビュー(MOTアニュアル2014ブログ)

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1967年
  • 埼玉県生まれ、埼玉県在住
1992年
  • 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了
-主な展覧会歴-
1988年
  • かねこ・あーとGI(東京)にて初個展を開催、以降、Gallery覚、小出由紀子事務所などで個展
2003年
  • グループ展「Chaosmos`03 Mindscape」佐倉市立美術館(千葉)
2007年
  • グループ展「αМプロジェクト2007 ON THE TRAIL Vol.3 Tokyo WALTZ/東京円舞曲」東京画廊+BTAP(東京)
2009-10年
  • グループ展「オブジェの方へ-変貌する「本」の世界-」 うらわ美術館(埼玉)
2010年
  • グループ展「アーティスト・ファイル2010―現代の作家たち」 国立新美術館(東京)
2013年
  • グループ展「秘密の湖」ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション(東京)

宮永 亮|Akira MIYANAGA

―断片を手探りで紡ぐ
自ら現地に赴き、カメラに収めた風景の実写映像を大量にストックし、その映像の断片の中から編集をスタートさせる宮永亮。
イメージは元あった固有の文脈から離れ、解体され、しかし作家の直観的な判断によって、繋ぎ合わされ、何層にも重ねられていきます。異なる場所・異なる時間に撮影された映像は、こうした緻密な編集作業を経て、新たな時間軸と複数のストーリーの中に投げ込まれるのです。
どこか既視感のある映像から始まり、意外性にとんだ連鎖と衝突へ...新たな視覚体験をもたらします。
本展では「波動」をテーマにした最新作《WAVY》を大画面で初公開します。

インタビュー(MOTアニュアル2014ブログ)

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1985年
  • 北海道生まれ、京都府在住
2009年
  • 京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻造形構想修了
-主な展覧会歴-
2006年
  • ギャラリーはねうさぎ(京都)にて初個展を開催、以降、児玉画廊(京都、東京)などで個展
2009年
  • グループ展「アートアワードトーキョー 丸の内」 行幸地下ギャラリー(東京)
  • グループ展「NEW DIRECTION展#1『exp.』」 トーキョーワンダーサイト本郷(東京)
2011年
  • 個展「成層圏 風景の再起動 vol.5宮永亮」 ギャラリーαM(東京)
  • グループ展「Invisibleness is Visibleness」 台北現代美術館(台北)
2013年
  • グループ展「第5回恵比寿映像祭 パブリック⇄ダイアリー」 東京都写真美術館(東京)
  • グループ展「なつやすみの美術館3『美術の時間』」 和歌山県立近代美術館(和歌山)

吉田 夏奈|Kana YOSHIDA

―経験を断片に散りばめて
山に登る、海に潜るといった自らの実体験に基づく記憶を手掛かりに、身体感覚を呼び覚ます風景作品を生み出す吉田夏奈。
延々 と続く何十メートルにもわたるドローイングや、異なる角度から見た森の姿を一つにまとめた彫刻作品など、再現性を超えた彼女の作品は発表ごとにスタイルも 自在に変化します。2013年の瀬戸内国際芸術祭では、小さな島の景観をすり鉢状の立体の内側に裏返しに描き、鑑賞者が360度の鮮やかな自然に包まれる 空間を出現させました。
近年、小豆島に移住し「地球の地表ではなく中心へ」と興味が深まった作家。本展では、作家が実感した自然のエネルギーやダイナミズムを追体験できるインスタレーションを美術館に創造します。

インタビュー(MOTアニュアル2014ブログ)

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1975年
  • 東京都生まれ、小豆島在住
2002年
  • 広島市立大学芸術学部デザイン工芸学科卒業
-主な展覧会歴-
2006年
  • ロサンゼルスにてアーティスト・イン・レジデンス。以降、フィンランド(2009)、小豆島(2011)でレジデンス、 アートフロントギャラリーなどで個展。
2010年
  • 個展「TWS Emerging 148」 トーキョーワンダーサイト本郷(東京)
2011年
  • 個展「ProjectN 44 『吉田夏奈』展」東京オペラシティ アートギャラリー(東京)
2012年
  • グループ展「あざみ野コンテンポラリーvol.2 view points-いま『描く』ということ」 横浜市民ギャラリーあざみ野(神奈川)
  • 個展「吉田夏奈展『Panoramic Forest, Panoramic Lake』」 LIXILギャラリー(東京)
2013年
  • グループ展「VOCA 2013 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」 上野の森美術館(東京)
  • グループ展「瀬戸内国際芸術祭2013」 小豆島(香川)


作家ポートレートすべて photo:Takehiro Goto

アーティスト・トーク

青田真也、パラモデル
2014年2月15日(土)15:00~  
福田尚代、宮永亮
2014年4月19日(土)15:00~
会場:企画展示室B2F/ 無料
当日は15:00から福田尚代さん、15:45頃から宮永亮さんのトークとなる予定です。

髙田安規子・政子
2014年5月3日(土・祝)16:00~
会場:企画展示室B2F/ 無料

吉田夏奈
2014年5月10日(土)15:00~(14:45開場) 
会場:企画展示室B2F/ 無料
*トークの前後に作家が展覧会場にて公開制作をいたします(観覧には展覧会チケットが必要です)。

パラモデル(林泰彦)
2014年5月11日(日)15:00~(14:45開場)
会場:企画展示室B2F/ 無料

髙田安規子・政子による地図のミニ・ワークショップ(事前申込制)

トランプの札、吸盤、軽石など日用品に緻密な細工を施し、スケールや価値も全く異なるアイテムへと変貌させる髙田安規子・政子。
二人の制作は常にわれわれの中にある判断「基準」を揺さぶり、新たな視点で世界を見る方法を示唆してくれます。
このワークショップでは、彼女たちが繰り返し用いてきた「地図」を材料に、二人の創作をトレースするような細かなカッティングに挑戦していただきます。地球儀や地図帳の作品なども特別にご鑑賞いただきつつ、二人の世界に触れてみるミニ・ワークショップです!

日時:2014年5月3日(土・祝)13:00~15:00(予定)
会場:東京都現代美術館 スタジオ
対象:高校生以上(細かい作業なお好きな方。カッターを使います)
定員:15名(事前申込制/ 申込多数の場合は抽選)
参加費:無料
講師:髙田安規子・政子
申込方法:締め切りました

解説スタッフによるサンデー・ツアー

解説スタッフが展覧会ツアーを行います。参加者限定で"見たり触れたり"できるフラグメント体験あり。
2014年3月2日(日)から5月4日(日)までの毎週日曜日 15:00~1時間程度。

ゴールデンウィークも実施します!
5月3日(土) 、 5月5日(月・祝)、 5月6日(火・振替休日)15:00からも解説スタッフによるツアーを開催します。

学芸員によるギャラリーツアー

2014年3月21日(金・祝)、4月29日(火・祝)。15:00~1時間程度。
企画担当学芸員によるギャラリーツアーです。
参加ご希望の方は 企画展示室3F入口にお集まりください。


その他詳細は随時ホームページでご案内します。

基本情報

会期

2014年2月15日(土)―5月11日(日)

開館時間

10:00〜18:00(入場は17:30まで)

休館日

月曜日(5/5は開館)、5/7

会場

東京都現代美術館 企画展示室3F

観覧料

一般1,000円(800円)/ 大学生・65歳以上800円(640円)/ 中高生500円(400円)/小学生以下無料
*( )内は20名以上の団体料金
*身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付き添いの方(2名まで)は無料です。
*毎月第3水曜日は65歳以上の方は年齢を証明できるものを提示していただくと無料になります。
*本展チケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。
同時開催の「驚くべきリアル」との2展セット券
一般1,600円、大学生・65歳以上1,200円、中高生700円

展覧会図録

2014年3月29日刊行予定  1,850円(税別)

アクセス

東京メトロ半蔵門線・清澄白河駅B2番出口より徒歩9分
都営地下鉄大江戸線・清澄白河駅A3番出口より徒歩13分

美術館お問い合わせ

03-5245-4111(代表)
03-5777-8600(ハローダイヤル)

同時開催

「驚くべきリアル」 スペイン、ラテンアメリカの現代アート‐MUSACコレクション‐ / 「MOTコレクション」
*会期はいずれも2014年2月15日(土)―5月11日(日)

同時開催・同時期開催の展覧会

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