MOTサテライト2019
ひろがる地図
美術館とまちをつなげ、まちの魅力を掘り起こすシリーズ「MOTサテライト」。
今回は、知らない土地の探検に欠かせない「地図」がテーマです。
「MOTサテライト」とは、東京都現代美術館(MOT)の活動を地域にも拡張し、作品鑑賞とまち歩きを通して、美術館周辺の「まち=地域」の魅力を再発見するシリーズ企画です。休館中は工場跡地や地域拠点を活用して展示を行なっていましたが、今回はこの春にリニューアル・オープンしたばかりの美術館をメイン会場として、まちなかにも展示スポット(MOTスポット)があります。これまで通り無料でご覧いただけます。
美術館の展示では、空想の都市の姿を詳細に描いた地図や、触覚や匂い、音などの感覚を表現した地図、そこに暮らす人の日常を可視化する地図など、さまざまな「地図」を紹介します。物語の断片を拾い集めるゲームブックや、質問に答えながら織り成すタペストリーも、まちとあなたの関係をマッピングします。海洋民族の作る不思議な海図や、ちょっとした誤解から描かれた古地図など、あなたの地図観を覆す地図も待っています。
最後の展示室で「冒険の書」をゲットしたら、そのまま清澄白河のまちを探検してみてください。MOTスポットを巡ったり、地図を見ながら自由に寄り道するのもいいですね。知らない土地と出会う手がかりであり、自分の視点を映し出す鏡ともなる「地図」は、この美術館のあるまち、そしてあなたの住むまちへのまなざしも変えるでしょう。
「MOTサテライト2019 ひろがる地図」解説パネル音声読み上げ用テキストデータ(PDF)
参加作家
今和泉隆行[地理人](いまいずみ たかゆき・ちりじん)
市販の市街地地図のフォーマットで、架空の都市「中村市(なごむるし)」を描いています。彼が20年以上かけて断続的に改訂している地図は、創造主として理想の街を具現化したものではなく、ここに暮らす156万人の日常や葛藤を観察者として読み取っていく過程が形になったものなのです。
*1985年生まれ、東京在住。7歳の頃から空想地図(実在しない都市の地図)を描き、現在も空想地図作家として活動を続ける。地図を通じて人の営みを読み解き、新たな街の見方を模索している。
マリー・コリー・マーチ
「私は楽天的だ」「私は家族を愛している」といった属性や性格を表す文章が書かれた200個のプレートが壁にちりばめられ、参加者が自分に当てはまると思うものに毛糸をかけていくと、壁面全体が大きな織物のようになる参加型の作品《アイデンティティ・タペストリー》を展示します。
*1977年生まれ、カリフォルニア在住。布や糸を使った参加型インスタレーションやパフォーマンスを行なうアーティスト。オレンジカウンティ現代美術センター、マージョリー・バリック美術館などで展示を行っている。
※文化庁委託事業「障害者による文化芸術活動推進事業(文化芸術による共生社会の推進を含む)」として作家が来日して制作します。
※《アイデンティティ・タペストリー》は1日20人限定で2週間程度かけて完成しました。
光島貴之(みつしま たかゆき)
音や匂い、触覚や身体感覚など、視覚以外の感覚によって空間や物事を認識し、それを目に見える形や色で表現するアーティストです。製図用のラインテープとカッティングシートで描いた平面作品で知られますが、今回は木製パネルに打った釘の間隔や傾き、高低差などで立体的に表現した新作も展示します。
*1954年生まれ、京都府在住。10歳の頃に失明し、鍼灸師としても活動。1995年より製図用テープとカッティングシートを用いる独自のスタイルで「触る絵画」の制作を始める。兵庫県立美術館やサンディエゴ美術館など国内外での展覧会・個展が多数。
■展覧会の点字解説シートとその墨字印刷の貸出をしております。ご希望の方は展覧会入口にてスタッフにお声掛けください。
サトウアヤコ
対話を通じて、日常生活の中であまり意識していないことを掘り起こす様々なプロジェクトを続けています。今回は、個人の日常や愛着を地図にプロットすることで、その土地の特性を顕在化させると同時にアーカイブする「日常記憶地図」という方法を用い、インタビューした深川・清澄白河の住宅の約60年間の土地との関係性と変化を可視化します。
*建築・情報工学を学び、対話を主としたリサーチやコンセプトデザインなどを行う。2010年から「mogu book」、「本棚旅行」、「カード・ダイアローグ」など複数のプロジェクトを継続しながら、媒介的なコミュニケーションや言語化のプロセスについて探求している。
orangcosong+進士 遙(おらんこそん+しんじはるか)
選択肢によってストーリーが分岐するゲームブック「冒険の書」を手がかりに、ひとりひとりが自由にまちを探検する『演劇クエスト』。展示室で「冒険の書」を手にしたら、物語のスタートです。実際に清澄白河のまちを歩いて目印を見つけながらプレイすることで、フィクションと現実が交差します。
*藤原ちから(orangcosong)
アーティスト/批評家。1977年高知市生まれ。横浜を拠点としつつ、アジアを中心に世界各地を旅しながら活動している。2017年度よりセゾン文化財団シニア・フェロー、文化庁東アジア文化交流使。
*住吉山実里(orangcosong)
アーティスト/ダンサー。1986年大阪生まれ。dracom登録メンバー。2010年より、京都を拠点に自身の作品創作をはじめる。完全無言、筆談のみで対話を試みる『筆談会』をアジア各地で開催。
*進士 遙
イラストレーター。1984年生まれ。18歳までソウル、上海で過ごし、ロンドンのロイヤルカレッジ・オブ・アートで学ぶ。「リサーチ×妄想×イラストレーション」をテーマにアートプロジェクトや地域振興活動などの視覚化に携わる。
その他
東京都現代美術館の収蔵作品から、荒木珠奈、栗田宏一、ナイジェル・ホール、柳幸典の作品を展示。また、国立民族学博物館および株式会社ゼンリンの収蔵資料より、歴史的・民族学的な視点による地図のご紹介もいたします。
基本情報
- 会期
2019年8月3日(土)- 10月20日(日)
- 休館日
月曜日(8月12日、9月16、23日、10月14日は開館)、8月13日、9月17、24日、10月15日
- 開館時間
10:00ー18:00(8月9、16、23、30日の金曜日は21:00まで開館)
- 観覧料
無料
- 会場
東京都現代美術館 企画展示室 地下2F および MOTスポット7箇所
- 主催
東京都、 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館・アーツカウンシル東京、文化庁
- 後援
江東区、アメリカ大使館
- 特別協力
深川資料館通り商店街協同組合
- 協力
国立民族学博物館、株式会社ゼンリン、KUSUNOKI WORKS、タウン誌 深川、オールプレス・エスプレッソ・ジャパン、チーズのこえ、しまぶっく、HOZON、江東区深川江戸資料館、ワールドネイバーズカフェ清澄白河、デリカやまこし
MOTスポットでの展示
地域に点在するカフェや店舗の窓ガラスや展示できるスペースを活用し、展覧会のショウケースとなる作品を展示します。
光島貴之《まちを歩く in清澄白河》
美味しい匂い、段差、光の入り方・・・光島貴之がまちなかを歩いて気になったお店を舞台にして、そこで感じたことを作品にしました。
■オールプレスエスプレッソ 東京ロースタリー&カフェ
江東区平野3-7-2
■チーズのこえ
江東区平野1-7-7 第一近藤ビル1F
■HOZON
江東区三好2-13-3
■しまぶっく
江東区三好2-13-2
※文化庁委託事業「障害者による文化芸術活動推進事業(文化芸術による共生社会の推進を含む)」
今和泉隆行《中村市の住人の落とし物》
架空の都市・中村市に住む人が清澄白河の街に来て、落とし物をしていったようです。落とし主の性格や好みなどが、レシートやポイントカードなどからうかがえます。(もちろん架空の人物です)
■ワールドネイバーズカフェ清澄白河
江東区平野4-13-1 第2伊勢喜代ビル1F
■深川江戸資料館
江東区白河1-3-28
■デリカやまこし
江東区白河4-3-1
地域パートナー
清澄白河のまちでは、美術館のほかにも様々な人や組織が独自の魅力的なプログラムを展開しています。当ウェブサイトで随時情報をアップデートしていきますので、ぜひご活用ください。MOTサテライト会期中は、会場内にもフライヤーやマップなどを設置してご案内します!
リトルトーキョー、Satoko Oe Contemporary、アルマス・ギャラリー、EARTH+GALLERY、アンドーギャラリー、Babaghuri、WILD SILK MUSEUM、江東区深川江戸資料館、GLASS-LAB、リカシツ、どうぶつしょうぎcaféいっぷく、POTPURRI、gift_lab GARAGE、KANA KAWANISHI GALLERY、LYURO GALLERY、Tap Gallery、小名木川物語制作委員会、水辺からアプローチするアートシーンズ、深川ヒトトナリ、清澄白河ガイド(シラベル) ほか
出品作家による関連プログラム
参加作家によるトークイベントやワークショップ
■ 今和泉隆行 トーク「空想都市の歩き方」
■ 光島貴之 ワークショップ「てざわりのカード」
■ サトウアヤコ ワークショップ「家族の風景を共有する」
■ orangcosong+進士遙 トーク「演劇クエスト 清澄白河編ができるまで」
サマーナイトトーク(サマーナイトミュージアム開催期間中に実施)
■ アグネス吉井 トーク&ワークショップ「街の隙間でこっそり踊る~ダンス・マッピングの手法~」
■ 株式会社ゼンリン「地図作りの達人たちの街の見方」
■ 浜元信行(顔マラソン研究所)+やっさん(GPS絵画)トーク「現代の地上絵 地球に絵を描くGPSアート」
ギャラリートーク
■ 担当学芸員によるギャラリートーク
■ インターンによる韓国語のギャラリートーク
その他
■ ビジュアル・ディスクリプション(言葉による記述)のある鑑賞会
■ 手話を使った鑑賞会
■ 車椅子で楽しむスローなアートツアー
■ こども向けワークショップ 浜元信行+やっさん「地球にでっかい絵を描く夏休みにしよう」
※ 詳細やその他のイベントについては、当ウェブサイトにて随時お知らせいたします。
※ 本内容は都合により変更になる場合がございます。
MOTサテライトについて
江戸時代からの下町情緒や水辺の風景などの魅力あふれるまちの特色に加えて、近年ではカフェやギャラリーも賑わいを見せるなど、新旧の文化が交わる清澄白河。東京都現代美術館は1995年に開館以来、この地で活動を続け、国内外の現代美術を発信してきました。リニューアルのための休館中(2016-2019年)にはじまったプロジェクト「MOTサテライト」とは、美術館の活動を館外に拡張しながら、まちなかでアーティストの作品展示やプロジェクトを実施し、「まち=地域」の魅力を再発見する試みです。地域との連携を中心にすえ、作品やプロジェクトを通して人と場、新旧の文化やコミュニティをつなぎ、現代における多様な文化、芸術表現との出会いの場を創出するとともに、地域における美術館の活動への理解を深めてきました。
2017年春の第1回「往来往来」、2017年秋の第2回「むすぶ風景」、2018年秋の第3回「うごきだす物語」は、美術館が休館中ということもあり、工場跡地や地域拠点などまちの中のスペースをメインの会場として展示やプロジェクトを展開してきましたが、第4回となる「ひろがる地図」は、バリアフリー対策などを含め、より多くの方に「普段使いの美術館」として楽しんでいただけるようにリニューアル・オープンした東京都現代美術館をメイン会場としています。実際にまちを歩くことで体験できる作品もあり、美術館での展示に関連した作品の展示を清澄白河エリアのカフェや店舗など7箇所で行ないますので、まち歩きを楽しみながらご周遊ください。地域のクリエイティブな拠点「地域パートナー」で行なわれる多彩な活動にもご注目ください。