未見の星座〈コンステレーション〉
-つながり/発見のプラクティス古来より、人々は夜空に輝く満点の星を眺め、それを自在に繋ぎ合わせて星座(=コンステレーション)を創造してきました。紀元前何千年も前からメソポタミア、エジプト、ギリシャ、アジア各地で「星座」が存在したことが知られていますが、世界中の人々は動物、人物、神々を瞬く星に重ねて見ることにより、その土地・その民族ならではの神話や伝説、宇宙観を夜空に描き出し、無限の想像力を飛翔させてきたのです。
心理学の分野においても、ある人の心の中の状況と偶然に起こる外的な出来事がふいに結びつき、全体として星座のようにまとまった意味として感知・理解されることを「コンステレーション」と呼んでいます。一見バラバラに見えるものや起こる事象に対し、われわれ人間は、無意識に何らかの連鎖を見い出し、意味づけする傾向をもっていますが、それは人間が広大な世界と対峙するために強化された認知のメカニズムの一つと言えるでしょう。
この展覧会では、世界にばらまかれた点と点の「つながり」を発見し、新たな「星座」をつかまえようとする作家たちの試みを紹介します。私たちが今いる「この場所」と「どこか違う場所」、そして「今」と「異なる時間」にあるもの、そして「自分」と全く縁がないと思っていた「他人」との不可視のつながりを彼らは鋭敏に感知し、その関係性や意味を絵画や映像やインスタレーションへと転化させていきます。
現実と想像の世界が交錯するような作品の数々――展覧会に訪れる人々もまた夜空を見上げる時のように、一見無関係で断絶しているような複数の作品の中からつながりを見い出し、自分と何かをつなぐ「星座」を探す旅へと誘われることでしょう。
満点の星がもはや見えなくなってしまった現代の都市に生き、大量の言葉やイメージに囲まれて生きるわれわれにとって、今、自力でコンステレーションを作り出す機会は限られたものになっていますが、本展覧会が世界のどこかに潜むまだ見ぬつながりを発見するための「問いかけ」、次なる何かを生み出すための「プラクティス」となれば幸いです。
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みどころ
何かと何かがつながる―未知なる7つの物語
ふだん何気なく見過ごしている日常、疑いもなく受け入れている常識―本展でご紹介するのは私たちの認識を変えてくれる7作家の7つの物語。美術館近隣の眠れる水の歴史を汲み上げる志村信裕、普段見られない美術館の奥へ裏へとつながる架空回廊を立ち上げる北川貴好、未知なものとつながろうとする人間の精神を見つめる山本高之―――7つの作家の世界はどこかでつながり、響き合う。つながりを発見し、展示室であなただけの「未見の星座」を眺めるひと時を。
"泥絵"壁画の制作現場が登場
アメリカ、インド、そして日本。世界各地をめぐり、その土地の土を使って、絵を描いてきた淺井裕介。本展では長さ20mの展示室の壁面一杯に世界各地の土と現代美術館界隈の土を用いて「泥絵」を描きます。生きとし生けるものたちが集い、混じり合うような圧倒的なダイナミズムがあふれるその世界は、展覧会オープン後も作家が手を加え、成長変化を続けます。公開制作も随時開催。作家の制作現場に立ち会えるチャンスです。
町に出て、「星座」を探す旅へ出かけてみよう
展覧会を見終えて美術館を出た後も、「未見の星座」は終わることはありません。太田三郎の作品にまつわる松尾芭蕉ゆかりの地へと足を進める、町に点在する作品を探しながら地域を巡る。これまでまったく縁のなかった町に、あなただけの「星」を見つけることができるかもしれません。近隣の深川資料館通り商店街には、伊藤久也によるユニークな「みせ派」のプロジェクト、各店舗のウィンドーに潜む魅力あふれる淺井裕介の生物など、作品があちらこちらに隠れています。
出品作家
淺井裕介 Yusuke Asai
伊藤久也 Hisaya Ito
大﨑のぶゆき Nobuyuki Osaki
太田三郎 Saburo Ota
北川貴好 Takayoshi Kitagawa
志村信裕 Nobuhiro Shimura
山本高之 Takayuki Yamamoto
主催
公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館
協賛
ブルームバーグL.P.
協力
深川資料館通り商店街協同組合、木場公園、清澄庭園、江東区芭蕉記念館、江東区深川江戸資料館、富岡八幡宮、グランチェスター・ハウス、株式会社シモジマ、ダイオ化成株式会社、朝日酒造株式会社
淺井裕介 あさい・ゆうすけ
1981年東京都生まれ。1999年、神奈川県上矢部高等学校美術陶芸コース卒業。熊本県在住。
泥、マスキングテープ、ほこり、小麦粉など身の周りにある手近な素材を自由に用い、描く場所を選ばず屋内外に果てしなく増殖する人物や動植物をアニミズム的な手法で描き出す作家。本展では美術館近隣の土、海外の土を用いて、大規模な「泥絵」壁画を制作予定。清澄白河駅から当館をつなぐ深川資料館通り商店街でもアートプロジェクトを実施予定。
伊藤久也 いとう・ひさや
1987年東京都生まれ。2014年、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。東京都在住。
祖母とともに家族のルーツを探る旅を記録した映像作品や、小豆島の小さな集落に長年暮らしてきた高齢者の日々の営みを描きだすインタビュー作品など、市井の人々の生の在処を問い直そうと試みる作家。本展では美術館近隣の商店街の店主らを対象にした「みせを小さい彫刻に。」ワークショップを実施し、深川資料館通り商店街では「みせ派」プロジェクトを実施。店のひそやかな歴史にスポットライトをあてる。
大﨑のぶゆき おおさき・のぶゆき
1975年大阪府生まれ。2000年、京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(版画)修了。現在、愛知県/大阪府在住。
描かれた絵や壁紙のイメージが溶けて崩れていく映像作品やヒト型ピンホールカメラのプロジェクトなどを通して、現代の複雑な環境下において形づくられるわれわれの認識の曖昧さや思い込みについて言及を重ねる。本展では「星座」を知覚する脳のメカニズムについてわれわれに再考を促す映像作品を展示。
太田三郎 おおた・さぶろう
1950年山形県生まれ。1971年、国立鶴岡工業高等専門学校機械工学科卒業。現在、岡山県在住。
「切手」というフォーマットを主に用い、人間の日常と社会との接点を視覚化する作家。各地で拾った種子を封じ込めた自作の「切手」、郵便局の消印を用いた作品、使用済みの古切手を用いたインスタレーションなど日々のささやかな営みに潜む歴史的・社会的な意味や物語を見る者に強く意識させる。本展では美術館の近くから300年以上前に漂泊の旅に出た松尾芭蕉の『おくの細道』をテーマにした作品等を発表。
北川貴好 きたがわ・たかよし
1974年大阪府生まれ。1999年、武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業 。現在、東京都在住。
既存のプレハブ家屋に無数の「穴」を開けたり、公園に大量の古タイヤを持ち込むなど、我々を取り巻く自然や人工物に対し積極的に介入する作家。サイトの社会的文脈や環境を作品の素材や構造に用い、大胆な再解釈を行う。本展では東京都現代美術館をテーマに、建築の表裏を可視化しつつ「美術館という状態」を維持するためのシステムを問うインスタレーション作品を発表予定。
志村信裕 しむら・のぶひろ
1982年東京都生まれ。2007年、武蔵野美術大学大学院造形研究科映像コース修了。現在、山口県在住。
鉛筆、画鋲、マッチなど見慣れた日常イメージをスケール変換して投影する映像インスタレーションを数々手がける。展示される場所の文脈を採りこみ、その空間を異化することにより、そこに眠る歴史や物語を見る者の脳裏に静かに立ち上げる。本展では美術館のある下町の歴史を紐解き、新たな映像作品を制作予定。
山本高之 やまもと・たかゆき
1974年愛知県生まれ。2002年、チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン修士課程修了。現在、愛知県/ニューヨーク市在住。
こどもの視点や感覚を通して、社会の制度や慣習に潜む言語化できない矛盾やジレンマを、ユーモアを交えて炙り出す。
本展では「未知なるもの」に遭遇した時のこどもの驚きや戸惑いの表情を丹念に記録した映像作品を展示。複数の情報を繋げて、「知る」に至ることの複雑なプロセスを可視化する。
関連プログラム
これらのプログラムは予約不要/ただし当日有効の本展チケットが必要です。
志村信裕によるイベント「文庫カバー屋台」
お気に入りの文庫本を1冊お持ちいただき、それに作家がブックカバーをかけてプレゼント。
2015年3月22日(日)11:00~ 先着20名(整理券制)
*当日10時から「未見の星座〈コンステレーション〉」展会場入口にて時間指定の整理券を配布します。
(お一人1枚)
詳細はこちら(スタッフブログへ)
淺井裕介によるクロージングイベント「泥絵の終わり」
2015年3月22日(日)
第1部 淺井裕介 クロージング・トーク
時間:17:00~17:20
会場:エントランス
参加無料、展覧会チケット不要
第2部 淺井裕介による「泥絵の終わり」パフォーマンス
時間:17:30~17:50
会場:「未見の星座〈コンステレーション〉」展示室内
定員:先着100名/整理券制
参加無料(ただし当日有効の本展チケットが必要)
*当日10時からエントランスのインフォメーションにて「整理券」を配布します(お一人1枚)。
*展示室の床にお座りいただきご鑑賞いただきます。
このクロージング・イベント実施およびその準備のため、淺井裕介《全ての場所に命が宿る》を完全な形でご覧いただけるのは3月22日(日)16:50までとなります。
詳細はこちら(スタッフブログへ)
地域とつながるプログラム
作品の展示やプログラムは美術館内だけでなく町の中にも隠れています。美術館と町とを結ぶ「星座」を発見してください。
*これらのプログラムは開館20周年記念プログラムとして実施します。
伊藤久也による「みせ派」プロジェクト&淺井裕介による「こびとみち」プロジェクト
2015年1月24日~3月22日 深川資料館通り商店街にて展示
ご覧になれる店舗等の詳細はこちら(スタッフブログへ)
北川貴好プレゼンツ
みっける!アーティストと子供フェスティバル 「アーティストのアトリエに行ってみよう!」
美術館から飛び出しアーティストのアトリエを訪問します。どんなアーティストなのか、どこに行くのかはお楽しみ。その町、そのアトリエで「30秒に1回」魅力を発見し、写真に収めます。目標1000枚!それを最終日には作家と一緒にアニメーションにして上映会"アーティストと子供フェスティバル"を開催します。
2015年3月21日(土)10:00~17:00、3月22日(日)12:00~16:00(*15:00からの上映会はどなたも参加いただけます)
会場:東京都現代美術館、アーティストのアトリエのある地域
対象:2日間とも参加できる小・中学生とその保護者
定員:10組(応募者多数の場合は抽選)*事前申込制(*お申込み受付は締め切りました)
企画:北川貴好(「未見の星座」出品作家)
以下のプログラムは終了いたしました。
淺井裕介による公開制作
2015年1月24日(土)、25日(日)、2月3日(火)~8日(日) 11:00~15:00
学芸員によるギャラリーツアー
2015年2月8日(日)、3月8日(日)、14日(土)、15日(日) 15:00~約1時間
太田三郎による「太田散歩」
作家と一緒に「植物の種」を探しながら木場公園へと小さな旅に出かけます。
2015年2月28日(土)13:00~15:30 3月1日(日)13:00~15:30 *荒天中止(小雨決行)
対象:中学生以上 各日12名、無料、事前申込制
※ 応募者多数の場合は抽選。結果は2月21日(土)までにメールで連絡をいたします。
基本情報
- 会期
2015年1月24日(土)―3月22日(日)
- 開館時間
10:00〜18:00*入場は閉館の30分前まで
- 休館日
月曜日
- 会場
東京都現代美術館 企画展示室1F、ほか
- 観覧料
一般1,100円(880円)/ 大学生・専門学校生・65歳以上800円(640円)/ 中高生600円(480円)
小学生以下無料(保護者の同伴が必要です)*( )内は20名以上の団体料金*身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付き添いの方(2名まで)は無料です。
*毎月第3水曜日は65歳以上の方は年齢を証明できるものを提示していただくと無料になります。
*本展チケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。
*同時開催の「菅 木志雄」「ガブリエル・オロスコ展」との2展、3展セット券もございます。- 展覧会カタログ
『未見の星座〈コンステレーション〉』
2015年3月7日(土)からミュージアムショップにて販売。価格1,980円(税込)
オープン後に撮りおろした展示風景や設営ドキュメントを掲載した公式カタログです。- アクセス
東京メトロ半蔵門線・清澄白河駅B2番出口より徒歩9分
都営地下鉄大江戸線・清澄白河駅A3番出口より徒歩13分- 美術館お問い合わせ
03-5245-4111(代表)
03-5777-8600(ハローダイヤル)- 同時開催
「菅 木志雄 置かれた潜在性」
2015年1月24日(土)-3月22日(日)「ガブリエル・オロスコ展-内なる複数のサイクル」
2015年1月24日(土)-5月10日(日)「MOTコレクション『コレクション・ビカミング』」
2015年1月24日(土)-6月28日(日)