オラファー・エリアソン ときに川は橋となる
東京都現代美術館は、アイスランド系デンマーク人アーティスト、オラファー・エリアソンの個展を開催します。
本展覧会「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」は、日本で10年ぶりの大規模な個展です。
私はベルリンの太陽の光を日本に持ってきました。私の手の中にあるのは小さな発電所なのです――。
オラファー・エリアソンは、電力にアクセスできない地域に住む人びとに届けられる携帯用のソーラーライト「リトルサン」で周囲を明るく照らし出し、そう語ります(2019年4月、東京都現代美術館にて)。
オラファー・エリアソン:アートをエコロジーの視点で見直すこと (2019年4月23日) ダイジェスト版 約8分
オラファー・エリアソン(1967年生まれ)はアートを介したサステナブルな世界の実現に向けた試みで、国際的に高い評価を得てきました。本展覧会は、エリアソンの再生可能エネルギーへの関心と気候変動への働きかけを軸に構成されます。それは展覧会のタイトルにも反映されています。エリアソンは言います。「〈ときに川は橋となる〉というのは、まだ明確になっていないことや目に見えないものが、たしかに見えるようになるという物事の見方の根本的なシフトを意味しています。地球環境の急激かつ不可逆的な変化に直面している私たちは、今すぐ、生きるためのシステムをデザインし直し、未来を再設計しなくてはなりません。そのためには、あらゆるものに対する私たちの眼差しを根本的に再考する必要があります。私たちはこれまでずっと、過去に基づいて現在を構築してきました。私たちは今、未来が求めるものにしたがって現在を形づくらなければなりません。伝統的な進歩史観を考え直すためのきっかけになること、それがこうした視点のシフトの可能性なのです。」
オラファー・エリアソンは1990年代初めから、写真、彫刻、ドローイング、インスタレーション、デザイン、建築など、多岐にわたる表現活動を展開してきました。本展は、エリアソンの代表作を含む、多くが国内初公開となる作品の数々で構成されています。自然現象を再構築したインスタレーション、光と幾何学に対する長年の関心が反映された彫刻、写真のシリーズ、ドローイングと水彩画、公共空間への介入をめぐる作品等が展示されます。
エリアソンは、幼少期に多くの時間を過ごしたアイスランドの自然現象を、長年にわたり撮影してきました。《溶ける氷河のシリーズ 1999/2019》(2019年)は、過去20年間の氷河の後退を鑑賞者に体感させます。また、私たちと自然との複雑な関係をめぐる思考が反映されたエリアソンのインスタレーションは、光、水、霧などの自然現象をしばしば用いることによって、周りの世界を知覚し、世界をともに制作する方法について、私たちひとりひとりの気づきをうながします。さらに、本展覧会では、最初期の代表作として、暗闇の中に虹が現れる《ビューティー》(1993年)をご紹介します。アトリウムの吹き抜け空間では、大規模なインスタレーションが本展のために制作されます。
スタジオ・オラファー・エリアソンの活動は美術作品の制作に限定されません。スタジオでは日々、実験とリサーチ、コラボレーションによって、さまざまなアイデアやプロジェクトが開発されています。本展覧会では、サステナブルな生分解性の新素材やリサイクルの技術に関する近年のリサーチの一部をご紹介します。
展覧会解説シート(PDF)
展覧会カタログには、本展キュレーターの長谷川祐子による論考と、エリアソンと哲学者のティモシー・モートンとの対談が収録されます(2020年4月24日先行発売予定 / 発行:フィルムアート社)。詳細はこちら
※展覧会カタログをフィルムアート社のオンラインショップ及びNADiffオンラインサイトで購入頂くと本展観覧料の特別割引券がついてきます。
東京都現代美術館チケットカウンターでご提示いただくと、本展の観覧料が当日料金の1割引となります。 (1枚につき1名1回限り有効。他の割引との併用はできません。)
展覧会のみどころ
1. 代表作と本展のための新作
展示室の内外で展開される2つの大規模なインスタレーション、写真のシリーズ、公共空間への介入をめぐる作品など、本展のための新作をご紹介します。また、鑑賞者の目の前に虹を再現する初期の代表作《ビューティー》(1993年)をはじめとする体験型作品やインスタレーションを展示します。
2. 自然の変化を追うアイスランドの作品
エリアソンは、アイスランドの自然を20年以上にわたり撮影し続けてきました。《溶ける氷河のシリーズ 1999/2019》(2019)は、過去20年間の氷河の大きな変化を目に見えるかたちで示します。
3. サステナブルな実践
誰もが「リトルサン」に蓄えられた太陽の光で自由にドローイングを描ける《サンライト・グラフィティ》(2012年)等の作品におけるソーラーエネルギーの利用、作品の輸送における二酸化炭素排出量の削減など、展覧会のさまざまな側面で環境に配慮しています。また、サステナブルな生分解性の新素材やリサイクルの技術に関するスタジオ・オラファー・エリアソンの近年のリサーチの一部をご紹介します。
※チラシに掲載しております作品名に一部変更がございました。(2020年2月14日)
変更前)《人間を超えた青いレゾネーター》2019年
変更後)《人間を超えたレゾネーター》2019年
出品作品《サンライト・グラフィティ》について
オラファー・エリアソン展に出品されている《サンライト・グラフィティ》は携帯式のソーラーライト「リトルサン」を使った参加型のプログラムです。作品の性質上、参加できる人数に限りがありますが、プログラム実施中の様子はどなたでも自由にご鑑賞いただけます。
なお、プログラムへの参加を希望される方は、下記のとおり[整理券制]にて受付いたします。
■プログラム開催日:会期中の開館日は毎日開催
■プログラム定員:1日につき30組[60名](各回の定員は2名)
■整理券配布日時:各日午前10時より(先着順、無くなり次第終了)
整理券配布終了のツイートはいたしませんので、ご了承ください。
■整理券配布場所:企画展示室地下2F No.09《サンライト・グラフィティ》の展示室
※整理券は1名につき1枚ずつ配布します。配布当日に限り有効です。(オラファー・エリアソン展のチケットが必要です)
※今後の混雑状況によっては配布方法等が変更になる場合がございます。
基本情報
- 会期
2020年
3月14日(土)6月9日(火)ー6月14日9月27日(日)- 休館日
月曜日(8月10日、9月21日は開館)、8月11日、9月23日
- 開館時間
10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
- 観覧料
一般 1,400 円
(1,120円)/ 大学生・専門学校生・65 歳以上 1,000円(800円)/ 中高生 500円(400円)/ 小学生以下無料
※ 小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。
※ 身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付添いの方(2名まで)は無料になります。
※『エコチル(キャリチル)』東京版2020年3月号に掲載いたしました、観覧料割引クーポンの有効期限は下記の通り変更となります。
2020/7/21追記:ただし、キャリチル3月号本紙からの切り取りのみ。エコチルネットのバックナンバーをプリントしたクーポン券は対象外です。
旧有効期限:2020年6月14日
新有効期限:2020年9月27日以下は当面中止といたします。※( )内は20名様以上の団体料金です。
※ 毎月第3水曜日(シルバーデー)は、65歳以上の方は年齢を証明できるものを提示していただくと無料になります。※ 家族ふれあいの日(毎月第3土曜日と翌日曜日)は、18歳未満のお子様をお連れの都内在住の保護者2名まで、観覧料が半額になります。(保護者の方は都内在住を証明できるものを提示)- 会場
東京都現代美術館 企画展示室 地下2F
- 主催
公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館、産経新聞社
- 後援
駐日アイスランド大使館、デンマーク王国大使館
- 協賛
クヴァドラ、ブルームバーグL.P.、株式会社ジンズホールディングス
- 助成
スカンジナビア・ニッポン ササカワ財団、公益財団法人大林財団
作家プロフィール
オラファー・エリアソン Olafur Eliasson
1967年、コペンハーゲン(デンマーク)生まれ。現在、ベルリンとコペンハーゲンを拠点に活動。アイスランドとデンマークで生まれ育ち、1989年から1995年までデンマーク王立美術アカデミーで学ぶ。1995年、ベルリンに渡り、スタジオ・オラファー・エリアソンを設立。スタジオは現在、技術者、建築家、研究者、美術史家、料理人等、100名を超えるメンバーで構成されている。2014年、建築家のセバスチャン・ベーマンと共同でスタジオ・アザー・スペーシズを設立。
光や水、霧などの自然現象を新しい知覚体験として屋内外に再現する作品を数多く手がけ、世界的に高く評価されている。テート・モダン(ロンドン)で発表した《ウェザー・プロジェクト》(2003年)やニューヨークのイースト川に人工の滝を出現させたパブリックアート・プロジェクト(2008年)等、大規模なインスタレーションで広く知られている。近年は、電力にアクセスできない地域に住む人びとに届けられる携帯式のソーラーライト「リトルサン」(エンジニアのフレデリック・オッテセンと共同開発)や、グリーンランドから溶け落ちた巨大な氷を街なかに展示することで人びとに気候変動を体感させる「アイス・ウォッチ」(地質学者のミニック・ロージングとの共同プロジェクト)といった社会的課題をめぐる取り組みにも力を注いでいる。
日本での主な個展は原美術館(2005年、東京)、金沢21世紀美術館(2009-10年、石川)がある。
第11回大林賞を受賞しました。詳細はこちら(2020.8.18)
イベント
オラファー・エリアソン 講演会
日時:3月 14日(土)16:00 - 17:30
※開催は中止となりました。詳細はこちら
場所:講堂(地下2F)
定員:180名(先着順/事前申込制)3/4(水)午前10時より当ウェブサイトにて申込受付開始
担当学芸員によるギャラリートーク
日時:3月 27日(金) 15:00 – 16:00 ※開催は中止となりました。詳細はこちら
4月 5日(日) 15:00 – 16:00 ※開催は中止となりました。詳細はこちら
6月 9日(火) 15:00 – 16:00 ※開催は中止となりました。詳細はこちら
場所:企画展示室 地下2F
レクチャー「アートとエコロジー」
日時:4月 19日(日) 15:00 – 16:30 ※開催は中止となりました。詳細はこちら
場所:講堂(地下2F)
講師:長谷川祐子(本展企画者、当館参事)
※ 詳細は当ウェブサイトにて順次お知らせいたします。
※ 開催内容は都合により変更になる場合がございます。
※参加にはすべて、本展チケットが必要です。
「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」展 展示風景
All images
撮影:福永一夫
Unless otherwise specified all works courtesy of the artist; neugerriemschneider, Berlin; Tanya Bonakdar Gallery, New York / Los Angeles
スタジオ・オラファー・エリアソンが制作した本展特設サイトはこちら(英語のみ)
本展のコンセプトや展示作品についての理解が深まる内容です。
展示風景(動画)
「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」展の展示風景を動画(1分)でご覧いただけます。
※ パソコンでご覧になる場合は設定の画質を1080pにして頂くと動画をより綺麗に鑑賞いただけます。
オラファー・エリアソンからのメッセージと展示風景をまとめた動画(約6分)です。
※ パソコンでご覧になる場合は設定の画質を1080pにして頂くと動画をより綺麗に鑑賞いただけます。
その他関連情報
ライゾマティクス主催のStaying TOKYOにオラファー・エリアソンと当館参事の長谷川祐子が出演したスペシャルトークセッションの収録動画が公開されています。
詳細はこちら