ゼロ年代のベルリン‐わたしたちに許された特別な場所の現在(いま)
展覧会概要
1989年の壁の崩壊後、ベルリンは変化を続け、政治、経済、文化の実験場として世界の注目を集めてきました。ゼロ年代、ベルリンは世界の中で、アーティストを最も魅了するホットな都市となっています。そこではゆるやかなソーシャルネットワークがつくられ、ジャンルを横断する恊働や交流がなされています。グローバル化によって加速された複雑な政治社会状況に対して、各々の作品に忍ばせられた社会に対する意見(こえ)は、ベルリンの街に音楽(うた)のように響き渡っています。
壁の時代、ベルリンは自由を熱望し、自由のための闘争の象徴ともなりました。その当時の熱気は今も残り、都市の中に散在するフリースペースとともに、現在のベルリンを「特別な場所」にしています。本展の副題「わたしたちに許された特別な場所の現在(いま)」は、岡田利規氏の著書『わたしたちに許された特別な時間の終わり』* から着想を得ており、現在のベルリンを象徴するものとなっています。なぜなら、ベルリンの歴史あるいは現在における特殊性は、単にベルリンを「特別な」場所としているだけでなく、私たちが社会に対する意見(こえ)を上げることが唯一「許された」場所であるからです。
「ここ」にある小さなユートピア-わたしたちに許された特別な場所の現在(いま)を、世界から集まりベルリンに住む18組(12カ国)のアーティストたちが、映像、絵画、パフォーマンスなど多様な表現によって映し出します。イデオロギーに替わる、社会と関わりをもった歴史、物語の再構築、都市への介入によって空間とアイデンティティの関係を問いなおすパフォーマンスや造形、情報、身体、都市空間が、新たな感性の位相のもとに、鮮烈な生産の実践として展開されます。
これからの芸術のありようを示す場所、それがベルリンなのです。
本展覧会は、日独交流150周年を記念してドイツ文化センターとの共催で開催されます。
*岡田利規(2007)『わたしたちに許された特別な時間の終わり』新潮社
[本展のみどころ]
今世界で一番アーティストに愛されているクールな街、ベルリン発の先端アートを紹介。あらゆる場所に遊び場を見つけるアーティストの身体や視点を通してベルリンの新しい風景がみえてきます。
ベルリンのアートを語る上で欠かせないアーティスト、ヨン・ボックが本展のために東京を舞台にした新作を制作します。全く新しい視点から切り取られる東京の姿は必見です。
日本人の父とイギリス人の母をもつアーティスト、サイモン・フジワラが実家を訪ね、父親とのコラボレーションにより新作を制作。ウィットとユーモアに富んだ映像インスタレーションを展示します。
バチカンが選んだ現代のキリストのキャスティング、パゾリーニの名作映画の登場人物6役を一人で演じるアジア人アーティスト、蝶の舞う楽園に集まる不思議なスキンヘッドの若者たち、破天荒で魅力的な映像が語る「数々のユートピアの物語」を
みせます。
[出品作家]
ネヴィン・アラダグ
ヨン・ボック
フィル・コリンズ
オマー・ファスト
フジ・リユナイテッド(サイモン・フジワラ&カン・フジワラ)
イザ・ゲンツケン
カタリーナ・グロッセ
アリシア・クワデ
シモン・デュブレー・メラー
キアスティーネ・レープストーフ
アンリ・サラ
マティアス・ヴェルムカ & ミーシャ・ラインカウフ
ミン・ウォン
ヘギュ・ヤン
*10/29~
サーダン・アフィフ
ジェイ・チュン & キュウ・タケキ・マエダ
クリスチャン・ヤンコフスキー
空間実験研究所(オラファー・エリアソン設立)
展覧会情報
展覧会名
ゼロ年代のベルリン‐わたしたちに許された特別な場所の現在(いま)
会 期
2011年9月23日(金・祝)‐2012年1月9日(月・祝)
開館時間
10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)
*9月24日は20:00まで *10月29日は21:00まで
*節電等の影響により、開館時間の変更や臨時休館の場合もありますので、予めホームページ等でご確認の上ご来館ください
会 場
東京都現代美術館 企画展示室B2F、1F ※1F展示は10/29より公開
休館日
月曜日 ※ただし10/10,1/2,1/9は開館、10/11,年末年始(12/29-1/1),1/4は休館
主 催
公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館、ドイツ文化センター
助 成
芸術文化振興基金、ベルリン日独センター、The Danish Arts Council
協 賛
BASFジャパン株式会社
協 力
NECディスプレイソリューションズ株式会社、東リ株式会社、ルフトハンザ・カーゴ、朝日酒造株式会社、株式会社サンゲツ
観覧料
一般 1,100円|大学・専門学校生・65歳以上 850円|中高生 550円
*20名様以上の団体は2割引。
*小学生以下、障害者手帳をお持ちの方と付添者2名、第3水曜日に観覧する65歳以上は無料。
*本展のチケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。(ただし10/3~28は展示替えのため休室します)
同時開催の「東京アートミーティング(第2回) 建築、アートがつくりだす新しい環境―これからの"感じ"」との共通チケットもございます。
一般1,600円|大学・専門学校生・65歳以上1,300円|中高生800円( 販売期間 10/29~2012/1/9)
展覧会カタログ
11月中旬刊行(予定)
同時開催
● 東京アートミーティング(第2回) 建築、アートがつくりだす新しい環境―これからの"感じ" 2011年10月29日(土)‐2012年1月15日(日)
● MOTコレクション 2011年10月29日(土)‐2012年1月15日(日)
● ブルームバーグ・パヴィリオン・プロジェクト 2011年10月29日(土)‐
関連イベント
来日作家と本展キュレーターによるトーク・セッション
日 時:2011年9月23日(金・祝)
会 場:東京都現代美術館 講堂(地下2階)
※ベルリン日独センターとの共同企画
参加費:無料(ただし当日有効の本展チケットが必要です)
1.パネル・ディスカッション
「ベルリンのアート・シーンについて」 10:30-12:00
登壇者(予定):
サイモン・フジワラ、キアスティーネ・レープストーフ、マティアス・ヴェルムカ&ミーシャ・ラインカウフ、アンジェラ・ローゼンバーグ(本展共同キュレーター)他
モデレーター:長谷川祐子(当館チーフキュレーター)
2.アーティスト・プレゼンテーション 13:30-
・キアスティーネ・レープストーフ
・マティアス・ヴェルムカ & ミーシャ・ラインカウフ
・サイモン・フジワラ
各回定員200名(先着順) 通訳あり
パネル・ディスカッション「異文化と芸術活動」
日 時:2011年11月21日(月)17:45-19:00
会場: 東京都現代美術館 講堂(地下2階)
ドイツ語、日本語、英語(同時通訳)
参加無料・要事前申込
参加ご希望の方は下記申込み窓口宛にお申し込みください。
event@sei.berlin.de
《おことわり》
イベント当日は美術館休館日のため、イベントに申込みされた方以外は入館いただけません。
また、「ゼロ年代のベルリン」展以外は休室しております(図書室、ミュージアム・ショップもお休みです)ので、参加される方もその旨ご了承くださいませ。
なお、駐車場もご利用いただけませんので、車でのご来館はご遠慮下さいますようお願い申し上げます。
【パネリスト】
ローベルト・ツィンマーマン(有限会社ベルリン・フィル・メディア取締役/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)
三宅響子(映画監督/ベルリン・タレント・キャンパス)
クリスチャン・ヤンコフスキー(アーティスト/東京都現代美術館「ゼロ年代のベルリン − わたしたちに許された特別な場所の現在(いま)」展出品作家)
イェルク・ズアマン(DMY国際デザインフェスティバル・ベルリンCEO&創業者)
アンネ・ルクス(女優/「berlin loves tokyo」出演女優:役名ルカ)
司会:ユリアン・ヘルマン(ドイツ文化センター「日独交流150周年」事業部長)
当イベントの概要やプログラム詳細は本イベント専用ページをご覧ください。
http://www.be.berlin.de/tokyo
トーク「Don't forget to go home - ベルリンのクラブ・シーンと音楽」
ベルリンで活動する音楽ライターの浅沼優子氏と西麻布にあるクラブ、elevenのディレクターである市川祐子氏をお招きし、世界で最も熱いと言われるベルリンのクラブ・シーンと音楽について語っていただきます。実際に音楽を聴きながら、東京とベルリンのクラブ・シーンの最前線で活動するお二人の対談をお楽しみ下さい。
日 時:2011年12月3日(土)16:00~17:30
ゲスト:浅沼優子(ベルリン在住音楽ライター)、市川祐子(西麻布elevenディレクター)、DJ NOBU
会 場:content restaurant(レストラン コントン/当館地下1階)
参加費:無料
【ゲストプロフィール】
浅沼優子 Yuko Asanuma
主な仕事は音楽ライター/通訳/翻訳/ブッキングなど。インディペンデントでアンダーグラウンドなダンス・ミュージックが得意分野。'07年に初めてベルリンを訪れてその街と シーンに惚れ込み、'09年8月にベルリンに移住。「徹底現場主義」をモットーに、現在は『Sound & Recording』、『ele-king.com』、『ソトコト』、などの媒体やライナーノーツなどの原稿を執筆している他、Ostgut Bookingのプロモーター、レーベルInnervisionsのPRなども務めている。現場で鍛えた耳と足腰には自信アリ。
市川祐子 Yuko Ichikawa
西麻布elevenディレクター。2001年よりSpace Lab YELLOWに広報として勤務。その後、マンスリー、ウェブの編集、ブッキング業務も担当。2008年6月YELLOWの閉店後、元スタッフと新店舗オー プンに向けて物件を探す中、幸運にも同場所に戻ることが決まり、2010年2月elevenとして再スタートを切る。世界各国のクラブシーン見学が趣味(ここ2年は全く行けてませんが)。ベルリンは1999年6月、2008年9月の2回訪ねている。
フィル・コリンズ アーティスト・トーク
日 時:2011年12月23日(祝・金)16:00-17:30 *15:30開場予定
会 場:講堂(地下2階)
参加費:無料(ただし当日有効の本展チケットが必要です)
定 員:200名(先着順)
アーティスト
サーダン・アフィフ|Saâdane Afif
[1970年/ヴァンドーム(フランス)生まれ]
アフィフは、制作したオブジェと共に詩やリリック、音楽を同時に展示する作家である。それらは、オブジェから得たインスピレーションをもとに、アーティスト、文学者や批評家、音楽家に制作してもらったものである。本展では、人とのつながりの中で作品を生み出してゆく彼の制作手法を、虹色に輝くひとつのオブジェ《これがあなたとわたしの世界のはかり方》(2008年)を中心に、リリックや楽曲とあわせて紹介する。
ネヴィン・アラダグ|Nevin Aladağ
[1972年/ヴァン(トルコ)生まれ]
トルコ人の家系に生まれ、幼少の頃にドイツに移住。アラダグはドイツ都市部におけるトルコ人の文化的アイデンティティや、それに対するダンスと音楽などのサブカルチャーの影響をテーマに映像作品を制作している。《心ゆくまで騒ごう》(2007年)は、東西ベルリンの境界にあったビルの屋上で、ハイヒールを履いた女性たちがヘッドフォンでそれぞれが異なる音楽をききながら踊り、音楽が身体をとおしてステップの音に変わる様子を描いた作品である。本展では、本作を中心とした映像コンピレーションを展示する。
ヨン・ボック|John Bock
[1965年/グリッボーム(ドイツ)生まれ]
ボックの活動は、乱雑としたインスタレーションの中で彼自身が「レクチャー」と呼ぶパフォーマンスに集約される。そのグロテスクでコミカルに誇張されたナンセンスな世界観は、時に鑑賞者を巻き込みながら即興的に作り上げられるが、その中では日常品などキッチュな事物から作られたオブジェが中心的な機能を果たしている。本展では、東京を舞台にした新作を撮影、映像インスタレーションとして展示する予定。
ジェイ・チュン & キュウ・タケキ・マエダ|Jay Chung & Q Takeki Maeda
[ジェイ・チュン: 1976年/マディソン、ウィスコンシン州生まれ|キュウ・タケキ・マエダ: 1977年/名古屋生まれ]
2001年からコラボレーションを開始。2010年に刊行されたハンス・ウルリッヒ・オブリスト(キュレーター)のインタビュー集の翻訳と出版をアート・プロジェクトとして行った。《ダムネイション》(2004年)は、2004年ハウス・デア・クンスト(ミュンヘン)で開催された展覧会「ユートピア・ステーション」の際に行ったパフォーマンスの記録映像である。「パフォーマンスはできない」と舞台恐怖症ともとれる発言と共に映像を流して、その場を立ち去るパフォーマーに対する躊躇、困惑する観客の姿が克明にとらえられている。
フィル・コリンズ|Phil Collins
[1970年/ランコーン(イギリス)生まれ]
パレスチナ人の雇われた若者が疲れ果てるまで踊り続ける《they shoot horses》(2004年)やインドネシアなどで開催されたザ・スミスの楽曲を熱唱するカラオケ大会の記録映像《the world won'tlisten》(2004-5年)などコリンズの映像作品の多くは、グローバル化時代における特定の地域に内在する政治的、文化的事象を背景に制作されている。出品作《スタイルの意味》(2011年)においても、マレーシアにおけるスキンヘッズのグループに焦点を当て、いかに文化が受容され、変化していくかを詩的な映像や叙情的な音楽を用いながら表象し、「スタイル」の意味を問い直している。
オマー・ファスト|Omer Fast
[1972年/イェルサレム生まれ]
ファストは、代表作《Spielberg's
List》(2003年)の作例にみられるように、歴史がどのように語られ、それを人がどのように内在化してきたかを、映画的手法を用いて体現する。出品作《キャスティング》(2007年)は、一人のアメリカ兵から聞き出した2つの物語が、インタビューの風景とそれを再現した映像で映し出される。しかし、この制作はアメリカ兵のインタビューを撮ることから始められながらも、ファストは彼の言葉を精緻に撹乱し、編集することでドキュメンタリーとしての性格を希薄化させている。
フジ・リユナイテッド(サイモン・フジワラ & カン・フジワラ)|Fuji Re-United(Simon Fujiwara & Kan Fujiwara)
[サイモン・フジワラ: 1982年/ロンドン生まれ]
サイモン・フジワラは日本人の父親とイギリス人の母親との間に生まれる。ケンブリッジ大学で建築を学んだ後、美術を学ぶ。フジワラは自分自身あるいは他者の個人史に架空の物語、しばしば同性愛者の視点から作られた物語を挿入することにより、私たちが受容している歴史がどのように構築されてきたかを明らかにする。その語りの手法はレクチャー形式のパフォーマンス、インスタレーション、彫刻や小説といった形式をとる。本展覧会では建築家である父親カン・フジワラとの日本での再会を題材とした新作インスタレーションを発表予定。
イザ・ゲンツケン|Isa Genzken
[1948年/バート・オルデスローエ(ドイツ)生まれ]
ゲンツケンは、個人の関心と社会のトレンドを絶妙なバランスで作品に取り込みながら、変化をし続ける作家である。公私ともに大きな影響を受けたゲルハルト・リヒターと出会ったデュッセルドルフ芸術大学で彫刻を学んで以来、ニューヨーク、ベルリンと移り住み、硬質で洗練されたミニマルな彫刻や写真から脆くてキッチュなインスタレーションまで、表現の幅を広げてきた。本展では近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエの高層ビル案に着想を得た《ベルリンのための新しい建築》(2001年)を出品。
カタリーナ・グロッセ|Katharina Grosse
[1961年/フライブルグ(ドイツ)生まれ]
グロッセは、これまで壁面に直接筆とエアブラシを用いて、グラフィティを連想させるような作品を描いてきた。その鮮やかな色彩とスプレーを駆使したダイナミックな造形は、表現主義的な強さと洗練された雰囲気を併せ持っている。近年では教会などの公共空間に、彩られた巨大なパネルを設置するような活動も展開しているが、本展では重層的に色彩が重ねられたキャンバスの作品に焦点をあてて、新作を公開する。
クリスチャン・ヤンコフスキー|Christian Jankowski
[1968年/ゲッティンゲン(ドイツ)生まれ]
ヤンコフスキーは、通販番組やオーディション番組など一般的に受容される典型的なテレビ番組をモデルに映像作品を制作し、マスメディアが繰り返し生産してきたイメージと現代社会における信仰が生み出す価値の真偽を批判的かつユーモラスに問いなおす。本展では、バチカンの司祭らが審査員となり、キリストのイメージに最もふさわしい俳優をオーディション形式で審議する映像作品《キャスティング・ジーザス》(2011年)を公開する。
アリシア・クワデ|Alicja Kwade
[1979年/カトヴィツェ(ポーランド)生まれ]
アリシア・クワデは、蛍光灯、時計あるいは鏡などミニマルな形態のファウンド・オブジェを効果的に組み合わせた作品を制作してきた。例えば、左右対称の同位置に傷がついた車をまるで鏡像のように提示する《ニッサン》(2009年)が彼女の代表作として挙げられる。本展では、ファウンド・オブジェクトの29体の陶器でできた人形がデュエットを組んで踊る様子を描いた新作インスタレーションを発表する。
シモン・デュブレー・メラー|Simon Dybbroe Møller
[1978年/オーフス(デンマーク)生まれ]
メラーは、20世紀における様々な芸術モデルに言及するコンセプチュアルな作品を制作する。彼の特徴は、作品とタイトル、あるいは文学表現から影響を受けたステイトメントを関係づけながら展示に組み込んでゆくことにある。本展では、カラフルなネットがキャンバスを覆う《The Catch》(2011年)シリーズから4点、ノートや本の表面にペインティングを施した《PILE》(2010年)シリーズの中から1点を出展する。
キアスティーネ・レープストーフ|Kirstine Roepstroff
[1972年/コペンハーゲン(デンマーク)生まれ]
レープストーフは、歴史的な資料から現代の広告などのポップなイメージ、新聞や書籍の政治色の強い写真まで幅広く収集したイメージを用いたコラージュを制作する作家である。カラフルなテキスタイルなどを織り交ぜた、複雑で繊細にイメージと素材が交錯する作品は、《1人の独裁者》(2007年)、《王は死んだ》(2008年)などのタイトルが示すように、しばしばイメージが持つ政治的意味合いを色濃くうつしだす。
アンリ・サラ|Anri Sala
[1974年/ティラナ(アルバニア)生まれ]
アンリ・サラは、イメージと音を効果的に組み合わせながら、自国アルバニアや旧東欧圏における歴史や、政治的問題から出発し、現在の世界の状況を鋭く批評する映像作品を制作する。出品作品《入り混じる行為》(2003年)では、屋上でDJが次々と曲をつないでいく様子が映し出されており、彼の背景となる空には様々な色の閃光が飛び交っている。それは祝祭の花火とも、戦火とも見え、見る者の想像力を掻き立てる。
マティアス・ヴェルムカ & ミーシャ・ラインカウフ|Matthias Wermke and Mischa Leinkauf
[マティアス・ヴェルムカ: 1978年/ミーシャ・ラインカウフ: 1977年。いずれも旧東ベルリン生まれ]
パフォーマンスを行うヴェルムカと、それを記録映像として撮影するラインカウフによる二人組のアーティスト・グループ。
信号で止まっているバスや電車の窓をゲリラ的に「無許可で」掃除する《Thanks Anyway》(2006年)やベルリン市街地の地下鉄網を入念に調査した後、違法で線路に侵入しトロッコで巡る《In-Between》(2007-8年)のように、ユーモラスを含みながらも都市に介入するパフォーマンスを行っている。出展作品《ネオンオレンジ色の牛》(2005年)は、ベルリンの地下鉄の線路内や橋の下などの様々な場所でブランコをゲリラ的に設置、こぐ様子を記録した映像作品である。
ミン・ウォン|Ming Wong
[1971年/シンガポール生まれ]
第53回ヴェネチア ビエンナーレにおいて審査員特別賞を受賞、2011年には原美術館で日本初の個展を開くなど、現在国際的に最も注目される若手映像作家。ミン・ウォンは、ワールドシネマの古典を用いて、社会のあるべき概念や慣習に無意識の内に縛られる現代人の心にさざ波を立たせる。本展では、イタリア映画の鬼才パゾリーニ監督の「テオレマ」(1968年)の主要な登場人物をすべて一人で演じる《明日、発ちます》(2010年)を発表する。
ヘギュ・ヤン|Haegue Yang
[1971年/ソウル(韓国 )生まれ]
ベルリンとソウルに在住のヤン・ヘギュは、プラスチック製のブラインドやネオンなどの大量生産品を用いながら、一貫して私的な記憶や個人と社会の関係性を作品のテーマとしてきた。本展では、情報保護封筒の地紋を切り取ってコラージュし、プライベートとパブリックの関係を問いかける《信頼できるもの》(2011年)シリーズから18点をインスタレーションとして展示する。
プロジェクト展示
1.空間実験研究所(オラファー・エリアソン設立)|Institute for Spatial Experiments (founded by Olafur Eliasson)
ベルリン芸術大学の教授を務めるオラファー・エリアソンが、大学の協力を得て2009年に自身のスタジオ内に設立した実験的な研究所。「空間」というテーマに対して領域横断的なアプローチを行っている。科学者、エンジニア、哲学者、建築家など様々な領域の専門家を招きレクチャーやワークショップを行っているが、ここでは、先生と学生の関係に従来のヒエラルキーはなく、対等の立場で活発な議論を展開する。映像や学生によるプロジェクトによりその活動を紹介する。
2.ベルリンの若手写真家によるベルリン・ライフ紹介
グラフィティ、公園、建築、ガーデン、クラブ等、ベルリン在住の若手写真家が撮ったベルリンの風景を通して、そのライフスタイルを紹介する。
企画: Institute for Arts and Media Administration, Freie Universität Berlin