ホー・ツーニェン エージェントのA展関連プログラム「手話通訳を介した担当学芸員による展覧会トーク」レポート
「ホー・ツーニェン エージェントのA」展の関連プログラムとして、「手話通訳を介した担当学芸員による展覧会トーク」(手話を主要なコミュニケーション手段とする方が対象)を当館のホワイエで実施しました(2024年6月15日)。
本展は映像作品によって構成されており、展示室内では暗くて手話が見えづらいため、参加者は事前に観覧のうえトークに参加していただきました。
今回は手話通訳のほか、美術館スタッフがiPadに展覧会トークのキーワードとなる用語や固有名詞を示しながら実施しました。また、要望があった参加者には、ロジャー(デジタルワイヤレス補聴援助システム)の貸し出しも行いました。
はじめに、展覧会担当学芸員より本展の説明とアーティストのホー・ツーニェン氏の紹介をし、参加者からの質問や感想に答える形でトークが展開されました。
話題は、京都学派を扱った作品《ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声》(2021年)から太平洋戦争当時の日本の状況や現在の社会情勢、「国家」という枠組みにも及びました。ホー氏がそれらの事柄をどのように作品の中で表現しているのか、最新作《時間(タイム)のT:タイムピース》《時間(タイム)のT》(2023年)は、なぜ「時間」というテーマなのか、参加者は質問をしながら、学芸員の話を熱心に聞いていました。途中、手話を使う参加者から専門的な用語について質問があると、学芸員からわかりやすい言葉で説明する場面もありました。
また、参加者の視線は時折、iPadに映されたキーワードにも向けられ、文字情報がトーク内容を理解するための助けになっていたことが窺えました。手話や文字情報など、参加者それぞれの必要に応じて、手段を選べることが大切だと実感しました。
今後も参加者の声に耳を傾けながら、快適にプログラムに参加できる環境を考えていきたいと思います。(S.O)