2023年09月22日(金)

【レポート】「あ、共感とかじゃなくて。」展 関連イベント「あ、『正解』で立ち止まるんじゃなくて。」

2023年9月9日、「あ、共感とかじゃなくて。」展関連プログラムとして、「あ、『正解』で立ち止まるんじゃなくて。~展覧会を観る前後に、のんびり哲学対話~」を開催しました。

哲学対話というと、小難しい印象があるかもしれませんが、参加者みんなが対等に自分の考えを話す会なので、こどもから大人まで参加できます。今回も10歳から50代の方まで、12名が参加して、笑いの絶えない会となりました。

ファシリテーターは、毎日小学生新聞で「てつがくカフェ」というコーナーを担当している神戸和佳子さん(ゴードさん)と、NPO法人こども哲学・おとな哲学アーダコーダの盛岡千帆さんです。

最初にゴードさんから、コミュニティボールの使い方の説明があります。話す人を示す毛糸のボールがあることで、まだ話している途中だったら他の人は割り込まずに待つ、ゆっくりじっくり慌てずに話すという哲学対話の大事なルールが守れるようになるのです。また、全員が順番に平等に話す必要はなく、みんなと全然違うことを言ってもいいし、言いたくないことは言わなくてもいいし、他の人の話を聴いているだけという参加の仕方もあります。ポイントは、かっこいいプレゼンぽく話そうとか、知識を披露しようとするのではなく、自分の経験から、自分自身にしっくりくる言葉で話すことです。
アトリウムの広々とした空間と、ちょっとお行儀悪くも座れるベンチ、そしてファシリテーターの柔らかい雰囲気で、参加者の方の雰囲気は徐々にほぐれていきます。

最初の問いは、展覧会ステートメント(はじまりの部屋に掲示してある文章)から、「共感されるとどう思う?」です。哲学対話は合意形成のための話し合いではないので、最後に「結論」や「正解」が出るわけではありません。途中20分間の休憩(対話の中で出てきた作品を観に行く時間も含めて)を挟んでの2時間で、たくさんの意見が出て、ゆったりと思考のプロセスを楽しむことができました。

例えばこんな話が出たりしました。
「『わかる』『そうだね』という相槌は、その後話が膨らまない。共感したり受け入れてくれたりしているとは限らなくて、適当に切り上げているだけなのでは?」
「楽しいことは共感しあいたい。オススメのコンテンツや美味しいものは友達に勧めたい。でも自分だけのものにしておきたい気持ちもある。」
「共感してくれると嬉しいけど、どの程度まで共感してくれているのか気になる。『普通』『まあまあ』と言われたら?」
「付き合っている人とケンカした時に、一緒に泣くことを強要されたことがある。同じ感情を分かち合わないと仲直りできないと言われた。それっきり別れた」

楽しい雰囲気につられて来場者の方も足を止め、「何をやってるの?」「え?哲学?」と興味深そうに聴いていかれる方もいました。

もし興味を持たれた方は、自分でも家族や友達など身の回りの人とやってみてください。結論を出さず、みんな一緒だよねとか人それぞれだよねといった総括をせず、勝ち負けや論破があるわけではない哲学対話は、日常のコミュニケーションやディベートとはとても異なります。よく知っている人と哲学対話をするのは、少し気恥しいかもしれません。でも、いつもと少し違う思考のペース、コミュニケーションの方法、尊重する態度を体験してほしいと思います。

★哲学対話とは?(今回のプログラムの募集ページより)
参加者ひとりひとりが「哲学する人」になって、問い、話を聴きあい、考えを深めていきます。
すべての参加者は、ひとりの人として尊重されます。お互いの対等な関係を大切にする活動です。

哲学対話のコツ
・わからなくなってもいい
・話がまとまらなくてもいい
・みんなと違うことを言ってもいい
・言いたくないことは言わなくていい
・人を感心させるようなことを言わなくていい
・聴いているだけでもいい
・自分自身にしっくりくる言葉で話す(なるべく借り物の言葉は使わない)
・ゆっくり、じっくり、あわてない

(担当学芸員 八巻)

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