デイヴィッド・ホックニー展関連プログラム「iPadで絵を描こう」
2023年9月3日(日)、デイヴィッド・ホックニー展の関連プログラム「iPadで絵を描こう」を開催しました。「iPadとApple Pencilを使って絵を描いてみる」という体験を通して、絵を描くという行為の楽しさを再発見し、ホックニーの表現をより深く理解することを目的としたワークショップです。
多くの方にご参加いただいた当日の様子を、お伝えします。
初めに、美術館スタッフがホックニー自身や作品について解説。彼はどのような作家なのか、作品制作において何を大事にしているのか、iPadで制作するようになった経緯など、参加者にホックニー展の図録にある図版をお見せしながら、説明しました。
その後、今回の講師、西中デザイン事務所の方々よりiPadに搭載されているメモアプリの使い方をレクチャーしていただきました。ツールの種類や色の選び方、太さ・透明度の変え方など、事細かに解説していただきました。
当初、レクチャーのあとに使い方の練習を行う予定でしたが、多くの参加者ののみこみが早く、その様子を見た西中さんは「必要ないですね」と笑い、iPadでの制作がそのまま開始されました。
いざiPadとApple Pencilを使った作品制作。
今回はモチーフとして、ホックニーの作品にもよく登場する「花瓶と花」を用意しました。
どの方もiPadは使い慣れているようでしたが、実際に絵を描く際には、スラスラと描く人もいれば、最初の15分は描いて消してを繰り返して試行錯誤する人、一つの場所だけにとどまらず、他の机に移動して別の花を描く人など、いろいろなタイプの方がいました。
また、見たままを描く方がほとんどでしたが、中には、透明な花瓶を描くことが難しいため、ホックニーの《No.118、2020年3月16日 「春の到来 ノルマンディー 2020年」より》のように草の生い茂った地面を背景に描く方も。
同じモチーフでも制作者によって変化する花の様子は、ホックニーがずっと探求していた「目の前の世界をどのように見るのか、どのように描くのか」を想起させ、人によって見る視点が違い、表現方法が違うことの面白さに気付かされました。
絵が完成したら、次は作品のプリントアウトです。完成した作品に参加者の名前を付けて、Air Dropでプリンターに送ります。
印刷の完成を待つ間は、Hockney ARというアプリが入ったiPadを用いて、AR体験も行いました。アプリを開いた状態でカタログに向けると、ホックニーのiPadでの制作過程が画面上で表示されます。
子どもの参加者も、興味津々でその様子を見ていました。
プリントアウトが終わると、制作した作品がホックニーの《2022年6月25日、(額に入った)花を見る》のように額縁に入った状態になって出てきます。
作品がプリンターから出てくるのを楽しみに待つ子どもや、受け取ったものを見て満足そうにする人、中には、記念として、子どもが描いたデジタルでのデータを求める方もいらっしゃいました。
今回参加者の皆さんが制作した作品は、東京都現代美術館のInstagramでご覧いただけます。
計3回行われた今回のワークショップでは、小学生から大人の方まで、多くの方にご参加いただきました。
iPadとApple Pencilを使って絵を描くという体験は、ホックニーのiPadの表現についての関心を促すと同時に、自身で描くことの楽しさを実感する機会になったのではないでしょうか。
今後、さまざまな芸術作品に出会い、作家の意図や表現方法を理解しようと試みる時に、作品を「見る」だけではなく、「作家と同じことをやってみる」ことが作品の新しい見方のきっかけになったら嬉しいです。
(MOT2023年度インターン生 藤井優衣)
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