2017年02月27日(月)

2/19(日) 佐野文彦、ごはん同盟 参加作家によるトーク

「MOTサテライト2017春 往来往来」の関連イベントとして、2月19日(日)14時から参加作家である佐野文彦、ごはん同盟のトークイベントが行われました。
まずは、佐野さんがこれまでのご自身の作品を画像で紹介しながらお話して下さいました。佐野さんは数奇屋大工に弟子入りされた後、2011年に独立されstudio PHENOMENONを設立。一貫して興味を持ち続けているのは「日本的な空間とは何か?」というテーマだそうです。特に障子や縁側など中と外の"中間領域"に興味があると話されていました。
今まで手がけられてきた多くの作品の中でも特に気に入っているのが2012年にパリに完成した《MIWA》。日本の"折形"(贈答や室礼などの際に用いられた紙を折って物を包む日本の礼儀作法の1つ)を軸に文化を発信していく会員制クラブで、佐野さんはこの建築のために神道を勉強され、「日本の精神性を空間を使ってどう伝えるか」を考えて作っていったそうです。

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佐野文彦《MIWA》 2012年

その後も釜山ビエンナーレやNYなど世界各地で日本的な空間を発表していた頃、文化庁の文化交流使に選ばれ1年間海外へ行くことになりました。伝統的な技術を持つ大工の方々の高齢化が進む中、「15年後には日本の伝統的な技巧が消えてしまうのではないか?」という思いがあり、それならば、まずは各土地に根ざした世界中の地域文化を見たいと思い、ヨーロッパやマレーシア、フィリピンなど様々な場所で現地の素材を使ってもてなしのための空間を作るプロジェクトを行うことにしました。フィリピンでは、まずその場で木材の切り出しが始まりビックリしたといいます。材料は地域の伝統的なもの、意匠は佐野さんの考えた日本的なもの、完成するまでの過程が楽しく、限られた時間と材料の中で極限までストイックに作品作りをすることに醍醐味があるとの事でした。やはりここでも「日本的な空間認識をどう表現するのか?」ということを常に考えて空間を作り上げたそうです。

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そして話はいよいよ今回の「MOTサテライト」で発表した《139.804083,35.681083》へ。この作品はご自身もこの地域に住む佐野さんが、「清澄白河エリア」でリサーチを重ねる中で「この地域には中心がない」ということを発見したところから着想されました。この作品は『深川資料館通り商店街事務所(MOTスペース3)』に無形の中心を作るという発想から生まれました。展示室の中心には神が宿ると言われ崇められてきた「磐座(いわくら)」が置かれています。この「磐座(いわくら)」は透き通った素材で出来ており、今年の深川八幡祭りに奉納するために熟成させている酒の映像が映し出されています。さらに周辺に設置されたモニターには、地域の各所からの風景がライブ中継されていて、形がなく情報のみが集まるまちの中心を演出しています。佐野さんも来場者の方がこの展示を通して日本的な空間を感じ取ってもらえれば・・と話されていました。皆さんもぜひ実際にこの作品を見に来てください!

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ごはん同盟 (右側がシライジュンイチさん)

さて、それではこの辺で本日のもう一人のゲスト「ごはん同盟」のシライジュンイチさんの登場です。ごはん同盟は清澄白河に住む、ごはん好きの、ごはん好きによる、ごはん好きのための、炊飯系フードユニット。試作係のしらいのりこさん、試食係のシライジュンイチさんのお二人で、お米やごはんに関するワークショップ、イベント、執筆、メニュー開発などを行っています。ご夫婦でもあるお二人のチームワークはバッチリ。なぜご飯なのか?まずはここからシライさんによるお話が始まりました。実はシライさん、ご実家が新潟の米農家なんだそうです。学生時代から憧れていた編集者になったシライさん、小さい頃から慣れ親しんだお米への「愛」は不変で、東京へ出てきた後もご実家のお米をマルシェで販売などしながらお米を炊いて食べてもらうイベントを始めたことがきっかけとなり、「ごはん同盟」の活動が始まりました。シライさんの願いは「楽しくごはんを食べてもらうこと」。その思いを伝えるため、門前仲町にある深川東京モダン館で『喫茶にちよう』を不定期に営業していたり、最近では「旅する羽釜」というプロジェクトを立ち上げ文字通り『羽釜』を担いで日本全国を訪れ、ワークショップやイベントなど楽しくご飯を食べてもらう活動をされています。また、「定食採集」というおかずにごはんをつけて「定食」の形にしたものを撮影し採集するプロジェクトも継続されています。「日本以外の国だとアジアではご飯を食べているので必然的にアジアエリアで撮影した定食が多いですね。」とのこと。

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そして、現在『江東区深川江戸資料館(MOTスポットQ)』で展示されている《深川蔵屋敷弁当》。かつて深川に諸藩の米蔵があったという史実に注目したごはん同盟は、もし現在の深川に蔵屋敷があったらという設定でお弁当を作り上げました。シライさんによると清澄白河エリアは江戸時代からの埋立地であり都市が拡張していった縁という印象を強くもったそうです。現在もその拡張は続いているように感じるというお話が印象的でした。展示されているお弁当は残念ながら模型と写真で実際に食べられないのですが、そのメニューは鰯の糠漬け焼き、笹かまぼこと万願寺唐辛子の春巻き、鶏の江戸味噌漬け焼き、花蓮根の明太子詰め、枝豆の珈琲煮、そして忘れてはいけない白米と沢庵等々、どれもとても美味しそう!展示を見た後に自分でも作ってみて、友達や家族と話しながら江戸時代の深川のご飯に思いを馳せるというのも楽しそうですね。

佐野さん、シライさん興味深いお話を有難うございました!          

(広報MN)
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「MOTサテライト 2017春 往来往来」の期間中は様々なイベントを予定しています。
イベント情報に今後のイベント予定をお知らせしていますので、ご覧ください。
みなさまのご参加をお待ちしています。

イベント情報:
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-satellite-1/




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