オスカー・ニーマイヤー展 SANAA西沢立衛氏による作品解説⑥ニテロイ現代美術館/コンスタンティーヌ大学
⑥ニテロイ現代美術館/コンスタンティーヌ大学
※以下N:西沢立衛氏、H:長谷川祐子(当館チーフキュレーター)
H:まず、こちらを見て頂きますと、ニテロイの現代美術館、90年代にニーマイヤーがフランスの亡命から帰ってきてからつくったものです。この美術館はリオデジャネイロの海岸にある、ニテロイ市の断崖に突き出すようなところにつくられた現代美術館です。この建物について、彼が映像のなかでも言っていますが、ひとつの花をイメージしており、そこにあがっていくスロープが長く、渦を捲いていくような形になっています。上がってみるとガラス越しに下に海が見えて、まるで浮かぶ空気のなかにいるような体験が出来るようになっています。これについて西沢さんお願いします。
ニテロイ現代美術館模型(縮尺1/100)
"オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男"展示風景, 2015
撮影:江森康之
N:これは今回の展示作品の中ではかなり新しい時代のものですね。岩の上に建てるときに、敢えて空中に浮かんでいるように建てるという、英雄的表現というか、コンテクチャリズムからこういう形は出てこないと思うんですが、意外に地形や環境に合っています。ニーマイヤーは映画の中で、岬に咲く一輪の花というように言っていますね。でもこれはここで思い付いたというよりも、彼は昔から、若い頃から、ベネズエラかな?カラカスで丘の上に美術館を建てる計画があったのですが、ピラミッドを逆さにしたような、空に向かって広がっていくような、おもしろい計画を構想していましたが、実現しませんでした。ニーマイヤーもぜひやりたかった仕事だったのではないかと思いますが、このニテロイはある意味で、その延長線上にあるようにも見えます。
H:もうひとつ、唯一アルジェリアでつくったコンスタンティーヌ大学、これは彼がフランスで亡命中につくっていますね。
コンスタンティーヌ大学模型(縮尺1/300)
"オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男"展示風景, 2015
撮影:江森康之
N:実は僕が学生のときに雑誌で見た初めてのニーマイヤーの建物で、最初に思ったのが地平線ということでした。これはブラジルではないのですが、ブラジル的な大地、どこまでも続く地平線というものを感じました。さっきのブラジリアの国会議事堂もそうですが、新しい大地というものをつくろうという、建築的なテーマがこの人にはあるように思うのですが、このコンスタンティーヌ大学もそうで、全体で不思議な月面基地のような伽藍配置をつくっています。
そこにある教室棟は、スーパーストラクチャーというか、300メートルくらいの大スパンをつくっていくような、梁そのものが教室になっているような、すごい構造で、ニーマイヤーらしいものですね。
オーディトリアム、これはいわゆるシェルストラクチャーというか、アーチですね。真ん中に壁があって、こうなることで柱を持たない大空間を、形の立体効果というものをつくっています。