2015年10月02日(金)

「ここはだれの場所?」展紹介 アルフレド&イザベル・アキリザン

「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」展、今回紹介するのはアルフレド&イザベル・アキリザンの《住む:プロジェクト―もうひとつの国》です。


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アルフレドとイザベルは夫婦で作品制作をしています。
現在はオーストラリアで活動を展開している彼らは、フィリピン出身。
アキリザン夫妻にとって、フィリピンからオーストラリアへの「移住」という体験は、彼らの作品制作における重要なテーマの一つになりました。
《住む:プロジェクト―もう一つの国》は、もともとフィリピンのバジャウ族の水上集落に関するリサーチがベースとなっています。
バジャウ族は、船で移動しながら海の上で暮らす漂海民です。しかし、政治的な理由で海域における国境線が引かれたことや、大規模漁法による環境破壊で、彼らの生活は徐々に苦しくなっていきました。その結果、陸に上がり、海辺に家を建てるバジャウが増え、民族としてのアイデンティティが揺るがされる事態となったのです。 *
バジャウ族が海から陸へと移住していったことと、アキリザン一家が自ら移住し「移民」となった経験が重なり、《住む:プロジェクト》は生まれています。
その後、このプロジェクトは世界の様々な国や地域で行われています。
ダンボールという素材も「移住」や「引っ越し」を象徴しており、どこでも手に入る素材ですが、作り手の思いやプロジェクトそのものの思い出はその土地特有のものとなります。

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無数の家は、近隣の元加賀小学校の児童のみなさんが作ったものです。
また、展示室の一角で開催している「ここはだれの場所?自分だけの家をつくろう!」
ワークショップで作られた家も仲間入りしています。
「住みたい理想の家」「家にまつわる思い出」を子どもたちなりに表現しており、同じ家は一つもありません。
小さな家がたくさん集まって、タワーオブジェが構成されており、その様子はあたかも「社会」を具現化しているかのようですが、アキリザン夫婦はこの地域に増えているタワーマンションからこの形のヒントを得ています。
ワークショップは会期中の土日祝日に毎日2回、開催しています。
是非ご参加ください。

(「ここはだれの場所?」展インターン 阿部美里)

* 黒沢浩美 他 編集『イザベル・アキリザン アルフレド・アキリザン 住む:プロジェクト―もうひとつの国』2013、金沢21世紀美術館、p.32


「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」
2015年7月18日(土)~10月12日(月・祝)
展覧会詳細はこちら

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