他人の時間 mamoru
『他人の時間』展参加アーティスト、今回ご紹介するのはmamoruさんです。
本展覧会で展示されているmamoruさんの作品《THE WAY I HEAR, B.S.LYMAN 第五章 協想のためのポリフォニー》は、
明治時代に行われた北海道開拓の歴史が私たちに及ぼす影響や繋がりを音、テキスト、映像などのメディアを複合的に用いて表現しています。
そして本作品の原点となったのが、展示室にも展示されている地質図のリトグラフです。
作品設営のため展示室にやってきたmamoruさんは、箱から慎重に地質図を取り出すと、
「あー久しぶりに見たなー。やっぱりいいなー。見る人が見るとすごいもんなんだけどなー」とつぶやきました。
mamoruさんはこの地質図の美しさに一目ぼれし、その歴史を地質学者のごとく緻密に調査してたどり着いたのが「ベンジャミン・スミス・ライマン」というアメリカ人地質学者・鉱山技師でした。この地質図は、ライマンが北海道の地質調査のために明治政府に招聘され来日した時に制作した日本で初めての地質図であり、ライマン本人が制作したものは二百部ほどしかないそうです。今回展示されているリトグラフは改めて原版から刷られたものであり当時ライマンが制作したものが忠実に再現されています。
またmamoruさんが北海道開拓の歴史に関心を抱いたもう一つの理由、それは彼の父親が北海道出身であり、まだ幼い頃北海道を訪ねる度に「ここは日本ではない、アメリカみたいだ」とアメリカに行ったことのない彼は何となく感じていたそうです。
そして大人になり、海を隔てている以上の違いが日本列島と北海道にはあることに関心を抱き、次第にこの違和感を掘り下げて行くようになりました。
かつてニューヨーク市立大学でジャズピアノ科を専攻していたmamoruさんは、現在オランダのハーグ王立芸術アカデミーと王立音楽院の共同プログラム「マスター・アーティスティック・リサーチ」(MAR)を修習中です。身近な物や行為の微かな音を「聴く」ことから見えてくる新たな世界観を提示する彼の作品は、観者の感覚を刺激し新たな時空間へと誘います。
会場設営時のmamoruさん
この感覚、ぜひ「他人の時間」展会場で体験してみください!
(「他人の時間」展インターン 現王園セヴィン)