太田三郎と「奥の細道」
太田三郎さんの出品作品のひとつ《奥の細道 1997》は、壁に大きく描かれた日本地図上に、いくつもの切手が並んだ作品です。その数なんと107枚!!
《奥の細道 1997》展示風景 撮影:加藤健
これらの切手は、松尾芭蕉の『おくのほそ道』に記された、芭蕉が通ったであろう地点に置かれ、また、その地にある郵便局の消印が押されています。押された 日付を見ながら順々に切手を追っていくと、芭蕉らがいつ、どこにいたのか、また、どれくらいの距離をどれほどの時間をかけて歩いたのかが手に取るようにわかります。
さて、太田さんは切手に消印を押してもらうために、各地の郵便局へ出向いたのでしょうか?
実は「郵頼」という方法を使って各地の郵便局へ往復はがきで切手を郵送し、消印を押したものを返送してもらったそうです。
各地の郵便局から数日おきに届く切手。その消印の地名は日を追うごとに北上したり、日本海側を西へ移動したり。
まるで旅先の芭蕉から日々便りが届くようです。
数字の順に点をつなぐと絵ができあがる遊びのように、消印の日付順に目で追うと浮かび上がる芭蕉たちの道程。
300年以上の時を隔てて松尾芭蕉と太田さん、また、それを見るわたしたちの間にも、見えない線で結ばれて、時間や場所を共有する。そんな体験ができる作品です。
《奥の細道 1997》展示作業中の太田三郎さん 撮影:後藤武浩
本展では、このほかにも消印を押した切手を用いた作品や、太田さんが日々採集した植物の種を封じ込めた作品など、バリエーション豊かに紹介しています。
作品を観ていると、太田さんが過ごす毎日とわたしたちの毎日が重なる瞬間があるかもしれません。
(広報担当:N)
未見の星座〈コンステレーション 〉-つながり/発見のプラクティス
2015年1月24日(土)~3月22日(日)
出品作家:淺井裕介、伊藤久也、大﨑のぶゆき、太田三郎、北川貴好、志村信裕、山本高之
展覧会詳細ページ⇒こちら
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