2014年08月21日(木)

ミッション[宇宙×芸術]展 木本圭子さんへのQ&A

ミッション[宇宙×芸術]では、木本圭子さんの作品《velvet order /柔らかい秩序》が展示されています。
暗い闇の中から細かな粒子が現われ、連なり、消えていく大画面の映像、その両脇にはタブレットが設置してあり、ハンドサイズでも映像を楽しむことができます。「初期点配置以外には乱数を一切使用しないで決定論で作成」※された映像はまるで小宇宙を眺めているような感覚を覚えます。
※展示キャプションより引用(作家自身の記述)


木本圭子.jpg

《velvet order /柔らかい秩序》
2014

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木本圭子さんに聞く
宇宙と作品に関する「3つの質問」

1.宇宙に興味を持った時期、きっかけは何ですか?

星を眺め星座の絵を描くのは好きな子供でした。やがて表現者にとっての宇宙は、物理的な意味での現実宇宙への想像や憧れも含めた、この生きている時空間の「中に」「自分も居る」という意識だとおもうようになりました。その場所がローカルであるありがたさと、想像力の限りで向かえる空を繋ぐある種の畏怖と予兆が、私の「宇宙」のようです。

2.どのようにして数理モデルによる本作品のような表現を生み出されたのでしょうか?

コンピュータの発達によって個人での動画制作が容易になり「動き」自体の持つ表現力の探求ができる環境が生まれました。私にとっての「動き」の興味は具体的な対象の動きの描写よりも「状況や状態が移り変わっていく」ことにあったので、「変化」をどのように記述するかが大きな課題でした。そして変化の「記述法」は科学の本に書かれていたのです。数学の素養があったわけではありませんが、作品制作の方法の1つとして取り組みました。つまり数理モデルを構成しプログラミングすることで「変化」を観察することから始めたのです。科学的な見方と自分の経験世界との違いに困惑しながら、両者の交錯地点を探りだし表現へ繋がる道を探しているところです。
美しいのは動的世界で、そこでは多様な振る舞いが次々に生成消滅し全体として崩壊はしないで遍歴を続けます。それぞれのジャンルがそれぞれの道でそれを掴もうとしているのを知ったことが、美術人が数理モデルを使ったことの最大の収穫でした。

3.次なるミッションは何ですか?(今後の活動展開について)

アート作品としての映像にはスクリーンへの上映展示と並行してアーカイブもかねた棲家が必要だと思っていました。また私の作品は、画集や写真集を好きな時間に眺めるように、居間でコーヒーを飲みながらゆっくり本を読むように鑑賞してもらいたいと考えていました。プライベートでも楽しめるアート映像の居場所です。そして、タブレットは「ビジュアルウォークマン」でもある(今なら「ビジュアル用ipod」でしょうか)。ならば美術としての映像作品は「バブリッシュ」(出版)できるのではないかと考えました。

このたび、デザイナーの永原康史氏の主宰する電子出版のレーベルepjpから映像作品のサイト「pmi」(ピィミィ/publishing for moving image)が生まれます。
http://epublishing.jp/
私はこの「pmi」で、ミッション[宇宙×芸術]展に出展した作品も含んだ5点の動画をアルバム化してパブリッシュします。(2014年9月19日出版予定)
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木本さん、ありがとうございました。

木本圭子 Keiko Kimoto
https://kimotokeiko.com/
多摩美術大学卒業。1988年頃から独学でコンピュータを使った数理的な手法による造形を始める。1997年頃から、さらに動的表現を探る制作、研究を開始する。作品集『イマジナリー・ナンバーズ』(2003年)を発表後、2004年より合原複雑数理モデルプロジェクト/ERATO/JSTに参加。平成18年度(第10回)文化庁メディア芸術祭アート部門大賞受賞、ミラノサローネ・レクサス館をはじめ、国際的に作品発表を行う。

(ミッション[宇宙×芸術]展スタッフY)

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