2023年01月25日(水)

「つくる」を通して広がる鑑賞 「セルフクルーズ ―作ってみよう『〇〇の塔』」

ギャラリークルーズ

2022123日(10:0015:00)、セルフクルーズ「作ってみよう『〇〇の塔』」が開催されました。
2020年からコロナ禍における活動として実施されているセルフクルーズのプログラムですが、今年度も多くの方に参加いただきました。
当日の様子をインターンの早川がお伝えします。


本クルーズのテーマは、当館公園口にそびえたつアンソニー・カロの《発見の塔》。
《発見の塔》を観察した後、用意された制作キットを組み合わせ自分だけの「塔」を作るというプログラムです。
当館エントランスにて、当日自由に参加できるオープンワークショップ形式で開催されました。

ワークショップは、まず《発見の塔》をよく観察することから始まります。
初めに、参加者はスタッフの案内で塔に登り、上から見下ろしたり、隙間から覗いてみたり、ぐるっと作品の周りを一周するなど、様々な方法でじっくり作品を観察しました。
参加者の中には、「今まで公園を通る時に外から見かけてはいたけど、ちゃんと見たのは初めて」という声も。

《発見の塔》は木場公園やコレクション展の出入り口側からも見えるため、目にする機会は多いですが、改めて色々な角度からじっくり鑑賞したことで新たな発見もあったようです。

作品を観察してそれぞれがイメージをふくらませた後は、いよいよ塔作りです。
まず、一つひとつ形やサイズ、高さが異なるベースパーツの中から1つ選びます。次に、用意された制作キットや道具を自由に使って作っていきます。

塔作りの基本となる制作キットの中の紙パーツは、全部で23種類。実際に塔に使われているパーツの形から着想を得て作っています。様々な鋼の板のパーツを組み合わせて作られた《発見の塔》を、今度は自分が一から組み立てていく番です。
参加者の中には、テープ類などの用意されたパーツ以外を塔の材料に活用する方や、ハサミの刃を開いてカッターのように用い、道具を自由に使いこなす方も。参加者の方々の制作過程を見守る中で、こちらの想像を超えるような自由な発想に出会い、多くの刺激を得ることができました。

また、制作の合間には、《発見の塔》をじっと見つめる参加者も多く、塔を作りながらも観察が続いている姿が印象的でした。

塔ができたら、名前をつけて完成です。
用意されたパーツは全員同じですが、一人ひとりの組み合わせ方や工夫によってオリジナリティあふれる塔が出来上がりました。
また、参加者の方には出来上がった塔のコンセプトやお気に入りのポイントなどを聞きました。

参加者の方の「〇〇の塔」を一部ご紹介します。

「悠久の塔」
海の中の世界を表現した塔。空には月が浮かび、海の中には海藻や恐竜が住んでいます。いちばんのお気に入りは右側に立った海藻。細長く割いて塔に散りばめた緑色のマスキングテープがアクセントになっています。
このマスキングテープは、元々はパーツを入れた袋の口を留めるために使われていたものですが、塔のアクセントとして生まれ変わりました。
「思い浮かんだまま作ってみた」とのことでしたが、準備されたパーツと道具以外に加え、そこにあるものを使い、独自の発想で工夫しながら制作していたのが印象的でした。

「見ぃ〜つけた!塔」
《発見の塔》でかくれんぼをしながら色々見つけたものをイメージして作った作品。
観察の際は、かくれんぼしながらも、塔に登り、バルコニーからより近くで作品上部を観察したり、隙間から外を覗いてみたり、狭い空間に隠れてみたりと、自分なりの楽しみ方で鑑賞していました。出来上がった塔も賑やかで、見つける楽しみや見つかる緊張感のような、かくれんぼの時のワクワクや楽しさが伝わってくるようです。

「恐竜の塔」
恐竜の中でも鳥をイメージして作った恐竜の塔。セロテープに刻んだ紙パーツをちらして作った装飾がポイントになっています。また、パーツの元の形を活かしながらも、細長く切れ込みを入れるなどの工夫によって鳥の尻尾や羽を表現しています。
アシンメトリーに作られているため見る人の角度によって姿が異なり、恐竜標本のようにどの角度から見ても楽しめる作品です。

「たちつて塔」
塔のネーミングのようにリズムを感じる、言葉の響きがそのまま形になったような形の塔。いちばんのお気に入りは、お母さんと作った屋根だそうです。セロテープをベースに、三角に切った紙パーツを丁寧に組み合わせて作ったドーム型の屋根。親子で一緒に協力して塔を作り上げました。
屋根のセロテープの透明部分が、光を通しステンドグラスのようにも見える、影も美しい作品です。

アンケートで頂いた参加者の感想を一部ご紹介します。
「今まで《発見の塔》をただ眺めていただけですが、今日《発見の塔》を参考にしながら自分の塔を作ることで、《発見の塔》を良く観察することができました。新たな芸術鑑賞の方法を体験できました」
「《発見の塔》に登れたことにこどもたちが大変喜んでいました。塔づくりはこどもも大人も楽しめるプログラムだなと感じました」
「外国人でも楽しめるプログラムです」
「展示物に登ったり体験できた上で創作することができたので、こどもと楽しく集中できました」
「大人でも気軽に参加させてくれる雰囲気があって良かったです」

他にも、「何十年ぶりに何かを作ったけれど、とても楽しかった」との声もありました。こどもだけではなく、大人への制作の機会としても、美術館における制作ワークショップの重要性について気付く場になりました。

こどもから大人、海外の方まで、幅広い層の方に参加していただいた本クルーズ。計50名の方が参加し、35点の塔が完成しました。
自分なりの塔を作ることを通して《発見の塔》をじっくり鑑賞し、自由な発想を膨らませるきっかけになったのではないでしょうか。
美術館では、「みる」ことが主体になる場合が多いですが、「つくる」側の視点からも作品を鑑賞してみると、新たな発見が生まれるかもしれません。

MOT2022年度インターン生 早川綾音)

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