2022年11月24日(木)

自分を“数字”で表そう!

スクールプログラム

コロナ禍で学校団体による美術館利用は、以前のようにはまだ戻っていません。そのため、教育普及担当の学芸員が直接学校に出向いたり、オンラインで授業を行うなど出張授業を展開しています。今回はコレクション作品を活用した授業の様子をお伝えします。

東京都現代美術館のコレクションの中でも代表的な作品である宮島達男《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》。1728個からなるデジタルカウンターの数字で構成され、学校団体鑑賞でも常に人気のある作品です。
それぞれの数字は、遅かったり、速かったりカウントするスピードが異なっていますが、1から9までカウントされると数字が消えて闇が訪れ、そしてまた光が誕生し1、2、3・・・と繰り返します。

  • 宮島達男《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》1998

作者の宮島さんがご出演している当館の貸出用教材(DVD)「アーティストに聞いてみよう!」の中でこの作品について次のように語っています。

「世の中には、漢字が得意な人、スポーツが得意な人、計算が早い人、図工が得意な人、いろいろな人がいます。みんな一緒だと面白くありません。違うから面白い。そうした人が全部集まって、美しいハーモニーができあがります。
時間も流れています。時間とは「心」の時間です。楽しい時間は早くすぎるし、つまらない時間は遅く感じます。一人ひとりの中の心の時間(スピード)も違います」

こうした話を聞くと、これらの数字が、のんびり屋だったり、せっかちだったり、まるで性格の違う一人ひとりの人間のようにもみえてきます。

出張授業では、本作品の展示風景や作品画像、実際に作品で使用されているものと同じガジェット(デジタルカウンターのパーツ)などを用いながら、作品の意図などの説明も交えて、鑑賞活動を行いました。そして作品鑑賞後は、本作品に関連した表現活動を実施しました。表現活動ではオリジナルの立体ワークシートを活用し、自分の好きな数字や自分を表す数字を考えてワークシートに数字を描き、併せて理由も記してもらいました。さらにワークシートを組み立て体育館や教室、図工室など各学校の状況にあわせて展示活動も行い、みんなで鑑賞しました。

  • オリジナルの立体ワークシート

実施した学校は以下の通りです。

・港区立笄小学校 4年生(2022年9月15日)
・品川区立小山小学校 6年生(2022年9月27日)
・葛飾区立こすげ小学校 5年生(2022年10月18日)
・東京都立墨東特別支援学校病弱教育部門 つばさ病院訪問学級 小学生~高校生(20221026日)

■港区立笄小学校での授業の様子

港区立笄小学校では、体育館に集まってスクリーンに作品画像や展示風景の動画を投影して鑑賞し、実際の作品に使用されているガジェットも紹介しました。鑑賞後は、ワークシートに取り組み体育館に自分達の数字を展示しました。体育館一杯に数字が広がりました。

■品川区立小山小学校での授業の様子

品川区立品川小学校は、来館して実際にコレクション展示室で宮島さんの作品を鑑賞しています。ですので、この授業は事後学習という位置づけで実施し、さらに鑑賞体験を深めることができました。展示活動は階段の踊り場や廊下で行いました。休み時間に他学年のこどもたちにも見てもらいました。

■葛飾区立こすげ小学校での授業の様子

葛飾区立こすげ小学校では、図工室を使って活動しました。展示も図工室や廊下、自分達の教室を使って展開。展示したままにはできないので、展示後タブレットで撮影し写真で記録して残しました。さらに、撮影した展示風景写真やその数字を選んだ理由などをまとめたシートも作成し、廊下に掲示して他学年のこどもたちにも活動の様子を伝えました。

なお、つばさ病院訪問学級の授業では感染対策上対面での授業ができないため、あらかじめワークシートを送付しておき、入院しているこどもたちと美術館とをオンラインでつなぎ実施しました。ラッキーになりたいので「7」、一番強くなりたいから「1」など、カメラの前で自分の選んだ数字を紹介してくれました。

こどもたちが選んだ数字とその理由をいくつかご紹介します。

1」:私は201111日生まれの11歳だから。私と1の間に共通点がたくさんあり、親近感がわいた。(小6
2」:昔、保育園の先生が2はニッコニコの2だよと教えてくれたから。(小4
3」:3はマイペースな私にぴったりの数字だと思います。(小5
4」:兄妹が4人いるので。(小4
8」:8を横からみたら∞で無限に広がれるという意味がある。また誕生日が521日で5218だから。(小6
9」:僕はクジでたくさん9がでるので9にしました。(小5

学校も学年もばらばらですが、宮島さんの数字を用いた作品のインパクトは絶大で、実際に展示室で作品を見ていなくとも、画像や動画を用いることで実際の鑑賞に近い体験ができたとコメントをいただいた学校もありました。また、自分を数字で表現するという活動とさらには校内に展示してみる活動を通じて、鑑賞と表現の往還がうまくいっていたともコメントを頂戴しました。さらに、「自分自身を表す」という意識が芽生えた子がたくさん見受けられたなど、この授業の成果も感じ取ることができるコメントも教員から寄せられました。

今後もコレクション作品の紹介を通じて、コロナ禍でも充実した鑑賞や表現活動ができるよう工夫していきたいと思います。(G

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