「やさしい日本語」に挑戦!
コロナ禍ですっかり外国人旅行者の姿をみかけることは減ってしまいましたが、国内に暮らす外国人の方は多くいらっしゃいます。そうした外国人の中に学校等で勉強している留学生がいます。
今回、団体鑑賞で当館を活用していただいたのは、横浜デザイン専門学校の日本語学科の留学生15名です。みなさん中国と香港の方たちです。鑑賞した展覧会は「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]」(2022年2月23日で終了)。担当教員との事前打ち合わせで、日本語を勉強している学生なので、日本語で対応をお願いしますとのことでした。とはいえ、学生間でも日本語レベルに差があるため、今回は「やさしい日本語」での事前レクチャーを試みました。
「やさしい日本語」とは、外国人等にもわかるように配慮して、簡単にした日本語のことです。もともと日本語や英語が十分理解できない、または必要な情報を受け取ることができない外国人のために、災害発生時に適切な行動をとれるようにと考え出された経緯があります。
日本語教師である担当教員に、事前に当日使用するレクチャー内容(パワーポイントデータ)をチェックしていただき、表現を変更するなど何度かやり取りをしながら本番を迎えました。また、マークレー展の展示作品には、音を言葉で表現する“オノマトペ”を使用したものが多くあることから、来館前の学校での事前学習では、日本語に特徴的な擬態語、擬音語について学ぶ時間も設けたそうです。
レクチャー当日は、話すスピードや言葉使いにも注意しながら進めましたが、ついつい早口になってしまいます。パワーポイントで紹介しているやさしい日本語表現だけでは説明不足の箇所もありますので、そこは話ながら補っていきます。すると、どんどん説明が長くなり、留学生の皆さんの顔色もだんだんと曇っていくのが伺えました。やはり、説明に力を入れるよりも、実際に展覧会を見てもらう方が重要です。百聞は一見にしかず。
レクチャーも早々に切り上げ、早速展示室へと向かってもらいました。基本、各自のペースで鑑賞していますが、時折引率教員の方々が留学生の皆さんに感想などを聞きながら回っていました。
展覧会鑑賞後に再集合してもらい、一番気に入った作品の感想などを伺いました。
「音のない作品に声を感じた」
「手話を使った映像を見て、おばあちゃんが使っていた手話を思い出した」
「新しい世界を知れた」
「音がなくても音が聞こえてきた」
「別の世界を感じた」
などなど、しっかりと自分の中にある日本語で語ってくれました。
しかし、このやりとりの中で、一回ではなかなか意味を理解することができない場面もありました。そうした時は、こちらも一生懸命に留学生の皆さんが何をいおうとしているのか、理解しようと務めます。相手もなんとか伝えようと言葉を探します。こうしたお互いにお互いを理解しよう、伝えようとすることがコミュニケーションの大切なところ。
今回「やさしい日本語」にチャレンジしましたが、どんなにやさしい言い回しをしても伝わらないものは伝わりません。日本語の「やさしい」には「易しい」と「優しい」があります。簡単にすることはもちろんのこと、相手に伝えたい、理解したいという優しさも同時に必要なのだと、今回の授業を通じて改めて実感しました。(G)