アーティストの1日学校訪問(開発好明さん)レポート2
【3校目】 2020年12月18日(金) 台東区立石浜小学校 5年生 1クラス 29人
3校目となる石浜小の5年生は、3年生の頃から単学級で、ずっと一緒に過ごしてきた友達同士です。お互いのことを良く知っているからこそ、想定外の行為や結果を通して、認識や協力することを再発見してほしいとの先生の思いを受けて、実施となりました
今回の実施場所は図工室。体育館のときよりも近くにいる人の様子がよく伝わってきます。
巻物状のくじを引くと、中からミッションが出てきます。
自分のミッションの内容は、他の人たちには内緒。周りの友だちが、どんな指示から何を作っているかはわかりません。頭の中で想像力を広げながら進めていきます。
引いたミッションについて質問がある場合には、独特の方法で表現します。片手を逆側にまわして耳に触れるサイン。手を上にあげるミッションがあるため、質問があるときには普通に手を上げるだけではだめなのです。独特のポーズをしてアピール!
3つ目のミッションは、スキップしたり、ニワトリの鳴き声があったり、拍手したり、足踏みしたりとアクションを伴うものも多く、図工室は一気ににぎやかに。一方で、思い出し笑いをしてみたり、誰にも気づかれないように図工室を1周したり、ひそやかなミッションもあります。また、「前からほしいものをかいてください」、「理想の街の一部を加えて作りましょう」、「“にがいもの”など、味を感じる表現をたしてください」といった作品を変えていくようなミッションもあります。
「右の人をじっくり見て、にがお絵をかいてください」というミッションを受けて、ちょうど近くに座っていた、美術館スタッフのにがお絵を描く子。
中には、連動ミッションもあります。「立ち上がってウソの自己紹介をして」というミッションに対して、「誰かが自己紹介を始めたら、それを身体で表現してください」というミッションも。
「嫌いな食べ物はメロンで…」という発言を受けて、身体で“メロン”を表現する子も。あるところでは、こんな不思議なやり取りも交わされていました。
約1時間の制作時間を経て、発表の時間です。
「今日の出来事」をテーマに制作した作品。「今日の給食」が表現されています。みそラーメンやスイートポテトが登場。ミッションの中に、「高くして」というものがあったので、麺が上に伸びあがる表現にしたそうです。
そして、上写真の作品はこのようなミッションを経て出来上がりました。
1つ目「ダンボールに作品を完成させる。自分の場所に戻ったら「今日は雪が降りそうな天気」と大きな声で言ってみる」
2つ目「作品に犬をいれましょう」を受けて、散歩している犬のお尻を入れました。
3つ目「あたたかいものなど温度を感じる表現をする」を受けて、半そで姿の絵に。
4つ目「近くの人と立って3人でオンチに校歌を歌う」。5つ目「好きなタイミングで隣の人に寄り目の顔を見せる」というミッションが行われていました。
コロナ禍なので、控えめに行われるミッションもあります。
「フデを3本持って作品を作ってください」というミッションを引いた子の作品には筆跡が見られません。「このミッションはどうやったの?」と開発さんから問いかけられると、「左手に筆を3本持った状態で、右手で描いた」との答えが! この授業のミッションは、どう解釈するかはその人次第。描いたり、作ったりすることだけが表現ではありません。ミッションを受けて、どうそれを表現するか考えることがポイントです。
「芸術とは作品のことだけだと思っていたけど、よく考えてみるとあの場所自体が芸術だと思いました。変わった図工で、変わったやり方でとてもおもしろかったです」との感想を寄せてくれた子もいました。
子どもたちの柔軟な発想力に、驚かされた一日となりました。
【4校目】 2020年12月21日(月) 江戸川区立第三葛西小学校 特別支援学級1~6年生 37人
4校目の実施は、1~6年生までの37人のこどもたちを対象に実施しました。 初めに開発さんの作品紹介です。「これは何を使っていると思う?」「これ、何だと思う?」などと話しながら話が進行していきます。
その後、身体と頭のウォーミングアップを経て、ミッションスタート。1つ目のくじを引いたら、早速材料を選び、制作を始めます。
「未来」をテーマにした立体づくりを引き当てた子は、空箱を集めて制作開始。
2回目のくじ引きで引き当てたミッションには、「好きな色の紙を丸く切って、おでこに貼ってください」とあります。
最初は1つだけだった丸い紙が、時間が経つにつれ、どんどん増えて、身体中に広がっていきました。
「ホワイトボードに好きな言葉を書く」というミッションを行う子。隣には、他の子が行った「鳥の絵」を描くミッションで残された絵も。
ミッションが3つ目、4つ目と進むにつれて、声を出したり、身体を動かしたりするミッションが増えていきます。体育館のところどころで「7時40分!7時40分!」「スパゲッティ」「ヤッホー」など、控えめながらも体育館に声が広がります。「7時40分」と発していた子は「朝起きた時間を言って」というミッションを受けて、「スパゲッティ」は「今食べたいものを言って」、「ヤッホー」は、「ヤッホーと言って」といったミッションを受けて繰り広げられていました。
さらに、開発さんにうその自己紹介をしてみたり、開発さんに作りかけの作品を見せて、何か言われたら「わかってないなー」と言うミッションを遂行する子も。
分かってはいても、それを目の当たりにすると、見ているこちらは思わず笑ってしまいます。
こどもたちは、手を動かして作品作りをしながら、それぞれにミッションを行っていきます。
「 一番近くにいる人に頼んで、花の絵を描いてもらう」というミッションで、描き込まれた花の絵。自分の意思だけでなく、人と関わりあいながら作品が出来上がっていきます。
完成した作品は絵画から立体まで様々です。画用紙に描いた絵や、板ダンボールに描いたもの、段ボールをつなぎ合わせて大きな作品にしたものまで多岐に渡ります。
授業が終わり、最後の挨拶をしているときに、ある男の子が「最後のミッションがあります」と声を上げます。「最高でした!」と伝えてくれ、ミッション完了です。
1つの作品をつくりながらも、声を出したり、動いたり、話しかけたり、お願いしたり、様々な行為が展開された、特別なひと時となりました。
(A.T)
----レポート3へつづきます