「かお」をテーマに:病院内訪問学級との連携授業
当館では2018年度から病院内訪問学級と連携授業を続けています。病院内訪問学級とは病院内の院内学級に通えない、あるいは院内学級が無い病院に入院中のこどもたちへの学習保障のために、ベッドサイド等で教員や学習支援員が行う授業や教育支援です。この連携授業では、美術館や現代美術に親しむきっかけを提供すると共に、プログラムを通じて児童・生徒どうしが繋がりを感じ、自己肯定感を向上させ、社会とのつながりを実感できるよう支援することを目的としています。
2020年度は、「かお・カオ・顔!発見!! ~身近なものを見立てて~」と題し、都内3か所の病院に入院中のこどもたち7名と計14回の授業を実施(8月~11月)しました。
授業の流れは以下の通りです。1)教育普及担当の学芸員3名が、身の回りで「かお」に見えるものを写真に撮り入院中のこどもたちに送る。2)それをきっかけに、こどもたちも入院環境の中で「かお」に見えるものを探し、あるいは日頃授業で使用している教材などで顔を作って写真に撮り学芸員に送る。3)こどもたちが撮影した「かお」の写真に対し、学芸員がコメントを書き、再度こどもたちに送る。こうした写真とコメントのやり取りを通じて交流しました。
こどもたちがベッドサイドからみつけた電源コンセント(写真1)や常夜灯(写真2)は、見事に顔に見立てられていました。また、教材で作られた顔(写真3)は、その配置に工夫が見て取れます。
写真1
写真2
写真3
感染対策上、学芸員は直接こどもたちと会うことはできませんが、授業を行う毎に担当教員から、こどもたちの反応や教員の感想などをまとめた授業記録を送っていただきました。
以下、授業記録からこどもたちの様子をいくつかご紹介します。
・学芸員からの手紙を先生が読み上げると、目を大きく見開いてよく見て聞いていました。
・治療のためクリーンルームに長期間いて、外泊もままならない中、外とのつながりは対戦ゲームと保護者だけなので、まったく知らない誰かからのお手紙が、自分の発想したことに対して返信としてくるのは、きっと思いがけないことだと思います。
・活動前は眠気などを訴えていましたが、活動が始まると目をぱっちりと開けて、受け答えしていました。学芸員が撮影した「かお」の写真を鑑賞していた時は、今までの中で一番目を見開いて見ていました。
・顔に見える「常夜灯」の手をかけるところから手を入れて「口からべろが出ているんだよー」と、発見したことを嬉しそうに教えてくれました。
・制作中は、「先生は見ないでね!」と一人で黙々と作り、その間にどんな顔を作っているのか先生が尋ねると、「女の子」「かわいい」と答えました。大きな口の女の子が完成し、本人も大きな口をあけて笑っていました。
・「いつ返事がくるの?」と、学芸員からの返信を楽しみにしているようです。
・学芸員からの手紙にあった「写真撮るの上手」や「笑っている顔できたね」というコメントに喜んでおり、お返事がもらえたことが嬉しかった様子でした。
こうした報告を読むことで、こどもたちの病室での様子を伺い知ることができ、学習に意欲的に取り組んでいたことも伝わってきました。今回の連携授業を通じて、出会えなくともこどもたちの存在を身近に感じることができました。(G)
連携校:東京都立光明学園(病弱教育部門 病院内訪問学級)