さわって、みる、油彩画の触察ツール
当館では、昨年度よりバリアフリーに特化した教育普及事業に取り組んでいます。
今回は、そのひとつとして作成した、油彩画をテーマとする「触察ツール」をご紹介します。
例えば、美術館で油彩画の作品を見ているときに、油絵具の質感ってどんな感じだろう?キャンバスに筆をあててみる感覚って?筆とペインティングナイフとでは、どんな風にちがうの?と気になったことはないですか?
美術館で展示されている作品そのものには触れることはできませんが、視覚に障害のある方もない方も、“さわる”ことを通して油彩画の世界を広げていただけないものかと考え、触察ツールを作成しました。
キャンバス(絵を描くための画布)には、目の細かいものから粗いものまで、何パターンかあります。
上写真のツールは、3種類の目の粗さの異なるキャンバスを支持体にしています。
立方体の面ごとに、筆描き、ナイフ描き、グレージング(溶き油でゆるくした絵具を何層にも重ねる描き方)で描画しており、キャンバスの目の粗さによっても画面のニュアンスは違ってきます。
粘り気があり、塗り重ねていくことで、より複雑な表情が出てくる油絵具。使い方次第で、筆跡を感じたり、つるっとして滑らかになったり、表出する絵具の様子は異なります。
こちらは描画ツールについてのご紹介。
粘り気のある油絵具をよく含むコシの強い豚毛の筆、筆跡の目立ちにくい軟毛のタヌキの筆、そしてペインティングナイフなど、描画のために使うツールはさまざま。
そんなツールを用いて描いた線をご紹介しているのがこちら。
目の粗さの異なる画布は、つまみ上げることができるので、布の厚さの違いも実感できます。
木枠に画布を張って描く油彩画の画面には、独特の弾力があります。
実際に、筆やペインティングナイフを画面に当ててみてみることで、油彩画を描く感触を実感してもらえるようなツールも用意しました。
今回ご紹介したのは触察ツールの一部ですが、他にも、手触りだけでなく、色を重ねて画面を構築する油絵具ならではの特性を生かし、下地との関係性や、筆などの描画ツールの違いによって表れる絵肌感など、視覚的にも油絵具の特性が伝わるような内容となっています。
コロナ禍において、実際にさわるものを共有することは難しい現状ですが、普段通りの日常が戻ってきたときのためにも準備を進めていきたいと思います。
(A.T)