担当キュレーターと巡る手話通訳を介した鑑賞会の実施
カディスト・アート・ファウンデーションとの共同企画展「もつれるものたち」をより深くまで楽しんでいただけるよう、手話を主要なコミュニケーション手段とする方を対象に、手話通訳を介し担当キュレーターと巡る鑑賞会を2020年8月27日(木)(11:00~12:30)に実施しました。
展覧会の意図や作品の解説のほか、参加者の皆さんと意見をかわしながら鑑賞しました。
参加者の中に難聴の方が1名おり、事前に手話以外のコミュニケーションを用いても良いかとの質問があったため、ご本人の要望で要約筆記(※)も準備しました。要約筆記は、教育普及のスタッフ1名が付き添い行いました。通常、コロナ感染症対策の一環で来館者の皆さんにはマスクの着用をお願いしていますが、手話は手の動きのみならず表情の変化も重要なコミュニケーション手段となるため、マスクを着用したままだと肝心の表情が分かりにくくなります。
そこで手話通訳、キュレーター及び参加者の皆さんはフェイスシールドを着用しました。
参加者は作品解説に耳(手話に注目し)を傾け、うなずいたり、納得したりする表情を見せる一方で、時に難しい表情を見せる方もいらっしゃいました。そうした表情に気づいた担当キュレーターが、「難しいですか?」と問いかけると、「今の説明はちょっとわかりにくいです」と素直な反応が返ってきました。言葉を変えたり、もう少し詳しく説明しなおすなど臨機応変な対応を心掛けました。また作品の感想なども尋ねると、企画者が意図していない見方や、新たな発見もあり、双方楽しみながらツアーが進んでいきました。
終了後、参加者からは、
「手話通訳付き解説ツアーが当たり前になるといいなと思っています」
「疑問に思ったこともその場ですぐに聞くことができたこと、またそのやりとりや感想も分かち合えたのが非常に楽しかった」
などの感想が寄せられました。
今回は、手話を主要なコミュニケーション手段とする方を対象とし、担当キュレーターの作品解説に情報保障として手話通訳を付けたオーソドックスなプログラムです。障害のある方を対象とした鑑賞プログラムでは、何か凝った特別なプログラムを企画することが多いのですが、こうした通常行われていることに情報保障をプラスすることで障害のある方も十分に鑑賞を楽しめることをあらためて確認できました。(G)
※要約筆記とは、聴覚障害者に対する情報保障の一つで、話の内容を要約して筆記する方法。