MOT美術館講座「核と物」上映会&トーク実施
2020年7月5日にカディスト・アート・ファウンデーションとの共同企画展「もつれるものたち」に関連したプログラムとして、MOT美術館講座「核と物」上映会&トークを実施しました。
2011年の東日本大震災で起こった福島第一原発事故により、帰還困難区域内の資料館/博物館に取り残された収蔵品や史料は、地域の学芸員によって救出が始められ、その後、国や福島県内外からの支援者たちの協力のもと、数年に渡る慎重な作業を経て運び出されました。「もつれるものたち」展出品作家である藤井光氏は、この活動を記録しながら、作業に伴うさまざまな困難や、今日まで他の場所に保管されている収蔵品たちそのものが示す現代社会の問題を議論する場を創出してきました。
今回の講座では、2017年10月、藤井氏が福島県立博物館と協働し、福島県いわき市で行ったシンポジウムの様子を記録した映像作品「核と物」を国内で初めて上映しました。映像の中では、12人の学芸員、考古学者、歴史学者、政治学者らが、福島県双葉町の文化財に起こったことから、災害が、文化とその記憶のあり方に継続的にもたらす危機について語り合っています。
「核と物」上映風景
上映後は、藤井氏と双葉町歴史民俗資料館の元学芸員である吉野高光氏、および本展企画担当学芸員・崔とが昨今のコロナ禍で考えたことや、文化財に関すること等、多岐にわたるトークが展開されました。
トークの様子(左から崔、吉野氏、藤井氏)
来場者からの質問も活発に出て、本展で展示されている物の扱われ方や文化財レスキューに関することなどの問いに登壇者も本音を交えながら答えていたが印象的でした。また、終了後のアンケートにはコロナ禍、様々なイベントが中止、リモートでの開催になる中、今回のように感染防止対策を施しながらの実施は、安心感を与え、その場で体験することの大切さを実感したという記述も見られました。
先の震災からリアルなコロナの現状など、過去と現在、そして未来へと「もの」に対する思考をめぐらせた本講座を通じ、あらためて「もの」への向き合い方を再認識・確認させてくれる契機となりました。
尚、本講座は、マスクを着用し、観客同士および登壇者間の距離をとり、室内換気を十分に行う等、感染防止対策を施しながら実施しました。(G)