アーティストの一日学校訪問(梅沢和木さん)レポート2
【3校目】2019年12月12日(木)東京シューレ葛飾中学校 1~3年生3クラス30人
3校目となる東京シューレ葛飾中学校は、フリースクールが母体の不登校経験者を対象とした私立中学校です。先生からはアニメやゲーム等二次元が大好きな生徒が多く、ネット上で自作の絵を投稿している生徒もいる、とのお話を伺っていました。
事前打ち合わせのために、学校にお伺いした際には、梅沢さんが来ると知った生徒さんが、入口で待っていてくれて、お話する場面も。授業当日を楽しみにしてくれていることが伝わってきました。
当日は30名が参加。そして、生徒さんたちに交じって、先生方も参加してくれました。
すぐに描き始める人もいれば、自分の名前を書いたところで、手が止まってしまい、描き進めるのに時間を要する人も。
梅沢さんからアドバイスをもらったり、周りの友だちと話したり、時に、携帯で調べたりしながら、自分の表現を探していきました。約1時間の制作時間を経て、最後に作品鑑賞の時間を取り、梅沢さんから1点ずつ作品の講評をしてもらいました。
最初は「かくことがない」といった文字から始まり、クレヨンで淡く塗りつぶした色で構成された画面でしたが、次第に絵具を用いた表現も加わり、作品の表情が変わっていきます。
梅沢さんからのアドバイスで新聞紙も貼り付けるなど、独特の画面が構築されていきました。
最後の講評では「悩んでいても途中で放り出さないで、素材や技法を探していったのが良かったですね」「書いている内容でも人柄がわかるし、使っている色や配置でもその人の感じが伝わってきます」など、一人ひとりの作品を的確な言葉で表現していく梅沢さん。
授業が終わると、自然と梅沢さんのもとに集まってくる生徒さんもおり、即席サイン会がスタート。サインを書いてもらうのを待ちながら、今日の授業がどうだったか感想を伝えてくれます。
「今日で作品が好きになりました!」「作品の世界観めっちゃ好きです!」「いつか本物の作品が見てみたいです」「僕の好きな○○のキャラクターを知っていてうれしかったです」など、今回の学校訪問では、さらなる交流が垣間見られるものでした。
放課後、先生と振り返りの話をしていると一人の生徒さんがやってきて、先ほど梅沢さんに書いてもらったサインをパウチしてもらった、と見せてくれました。
その勢いで2枚目のサインもリクエスト!「強欲だな~」と梅沢さんから笑いながら突っ込まれる場面も。
イラスト付きのサインを描く梅沢さんに、生徒さんはとても嬉しそうにしていました。
しばらく時間が経ち、再び手に何かを持った彼が登場。
美術の時間に作ったというカードゲームに出てくるキャラクターを参考にして作った“強欲な壺”。「もらってばかりじゃ悪いから」と、力作を梅沢さんにプレゼント。
そんなサプライズに梅沢さんはとても喜ばれていました。
【4校目】2019年12月20日(金)新宿区立落合第六小学校 5年生36人
4校目の実施となった落合第六小学校では、先生から「こどもたちに新たな世界と出会ってほしい」との思いから今回お申込みいただきました。
当日、電車遅延により、梅沢さんが授業開始時間に間に合わない、というハプニングが。
そんな場面でも先生は慌てることなく、こどもたちに「ヒーローは遅れてくるでしょ。だから梅沢さんも今日は少し遅れて登場します」などとユーモアたっぷりに場をつないでくれました。
どうにか迂回路を見つけて向かっている梅沢さんを待ちながら、まずは美術館スタッフから今日やることについての説明です。
梅沢さんや他のスタッフが手掛けた「自分地図」のサンプルを見ながら、こどもたちは、画用紙にどんな風に展開していくか想像を広げていきます。
まずは自分の名前を書くところからスタート、どんどん手が進む子もいれば、悩みながら進める子も。
授業が始まって20分ほど過ぎたところで最寄り駅から激走し、汗だくの梅沢さんが到着!遅れてきたヒーローの登場です。
自分地図に向かい始めたところで、いったん手を止めて梅沢さんのお話を聞く時間に。独自に作品の世界を構築している梅沢さんの作品紹介を受けながら、今回なぜ「自分地図」をやることになったか、といった説明もしてくれました。
お話を聞いた後は気持ちも新たに、紙に向き合って制作を続けます。
学校で自由に使えるパソコンを使ってリサーチをしながら制作を進めていきました。
約1時間の制作時間を経て、作品を貼り出してみんなで鑑賞を行いました。
「色使いがいいですね」「好きなものを色分けして描いているね」「余白が多いけど、細かくしっかりと描いていて、これだけでよい作品になっていますね」などと梅沢さんからコメントがありました。
中には、今回の授業をきっかけに、両親と自分のことを話して名前の由来を知った、という子も。実際に手を動かす制作時間だけでなく、事前に自分自身と向き合って考えておくという、目には見えてこない過程の大切さが伝わってくるものでした。
(A.T)
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