アーティストの一日学校訪問(末永史尚さん)レポート2
【3校目】 2018年11月29日(木) 足立区立皿沼小学校 6年生 1クラス 35人
授業テーマ:「身の回りのものを塗りつぶしてみる」
3校目の皿沼小学校では「身の回りのものを塗りつぶしてみる」
ことをテーマに実施しました。
家の中で使わなくなったものや学校で廃棄するようなものの表面を
白く塗りつぶして「かたち」を抽出。
その「かたち」を支持体にして、記憶を頼りに元の色を塗って
みることで、立体的な絵をつくるという内容です。
元の色や形を完璧に再現することを追求するのではなく、
この行為を通して身近なものを新たな視点でとらえる体験を
してもらうことが目的です。
まずは机の上に持参したモチーフを並べてみます。
こどもたちが持ってきたのは、フライパンやお玉、時計、ノート、
手提げバック、靴、お菓子の入っていた缶など。
何人かのこどもたちは、先生が用意した学校にまつわるモチーフを選びました。
白く塗りつぶすと、色や形は見えなくなってしまうので、
どんな色や形がついているか、じっくり見て目に焼き付けます。
透けて見えないように、白いジェッソで念入りに塗りつぶしていきます。
真っ白なベースができあがったら、元の色や形の印象を絵具で表現していきます。
記憶を頼りに、試行錯誤して色を作ったり、模様を再現したりと、
それぞれの想像力が加わった色や形が描かれていきました。
出来上がった作品は、最後にテーブルに置いて全員で鑑賞しました。
「今日はもとの色を塗りつぶして見えなくすることで、
色が持つ"もの"を想像させる力を体験してもらいたかった。
一度色を塗ってみて、やっぱり違うなと思って塗りなおしている子がいました。
これはものづくりにおいてとても大事なことです」
といったメッセージが末永さんから伝えられました。
こどもたちの感想文には、
・色の影響や大切さなどが感じられた。
・今までの図工の時間の中で一番楽しかったといっても
過言ではないくらいに楽しかった。
・3時間目が終わったことも気づかないくらい集中した。
・ふだん見えてこなかった部分が見えて来てすごく面白かった。
などといった意見が多く書かれ、末永さんならではの視点による
ワークを存分に楽しんでくれたことが伝わってくるものでした。
【4校目】 2018年12月13日(木) 台東区立蔵前小学校 4年生 73人
授業テーマ:「物の影をつかまえる」
4校目となる蔵前小学校では、先生から「光と影」をテーマにした授業を
やってみたい、とのリクエストを受けて"影"を楽しむ授業を行いました。
実施内容は、モチーフに光をあてて、さまざまに変化する影の形を
観察し、自分が良いと思える形ができたところで、
紙を置いてその形を絵具でとらえるというもの。
授業に先立ち、こどもたちは"身の回りにある好きな形"や
"気になる形"探しをしてもらい、モチーフを3点用意しておいて
もらいました。
授業会場となったのは、図工室ではなく、理科室。
いつもと違う場所での実施となり、こどもたちは興味津々の
面持ちでやってきました。
末永さんの自己紹介のお話を経て、今日やることの説明です。
まずは、机の上に持参したモチーフを並べて、友達がどんなものを
持ってきたか見合う時間を設けました。
持ってきたものの一例。
ザルやフライ返し、ペットボトル、人形、梱包財の一部、お菓子の入れ物、
落ち葉、電球など多岐にわたるものばかり。
今日は、これらのモチーフを組み合わせて映し出される影の
面白さと出会ってもらいます。
部屋の電気が消され、わずかな光が差し込んでくるだけの、薄暗い空間に。
台の上に持ってきたものを置いて、組み合わせたりしながら
影探しを行います。
台にセッティングされているライトは、アームがついたタイプで、
簡単に作品に近づけたり遠ざけたりできるものです。
さまざまな角度から光を当てて生み出される影の世界を楽しみます。
物を重ねて複雑な形を作り出したり、
コマのように回転させることで生まれる影の痕跡を写し取ったり、
さまざまに工夫する様子がみられました。
一人ずつ順番に体験しても良し、チームで協力して影を
つかまえても良し。
モチーフの貸し借りは自由です。すると、友達のモチーフと組み合わせて影を
作り出すチームも。
光の部分に注目して塗ることで、影を際出せるなど、
自分なりのやりかたを見つけて取り組む様子も見られました。
出来上がった作品は、教室内の壁に貼り出していきます。
最後に鑑賞の時間を設けました。
明かりがつくと、色が鮮明に飛び込んできて、薄暗い中で
見ていたときと印象が異なります。
まずは、5分ほど自由に友達の作品を鑑賞。
こどもたちがつかまえた影は、カラフルな色や形で表され、
それぞれに個性的な作品が誕生していました。
「ものの影をつかまえる」ことを通して、自分たちの身の回りに
あるものの奥深さ知ったというこどもたち。
いつもと違う視点でものと向き合うことで、影の世界を
存分に楽しむひと時となりました。
(A.T)
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