アーティストの一日学校訪問(秋山さやかさん)レポート1
当館の所蔵作家の方を学校にお連れして授業を行う「アーティストの一日学校訪問」。
引き続き休館中となる平成29年度は、2名のアーティストの方にご担当いただきました。
お一人目は、国内外のさまざまな土地を巡り、そこで出逢ったものや出来事を縫う行為や手紙などを用いて表現する美術作家の秋山さやかさん。
そしてもうお一人は、「一木造り」という伝統的な日本の彫刻の作り方によって、少年少女の像を制作している彫刻家の棚田康司さんです。
訪問するのは、一人につき6校。
都内の小・中・高・特別支援学校を対象に実施しました。
まず始めに、秋山さやかさんの授業をご紹介します。
大きなテーマは、「わたしの思い出あなたの思い出」。
普段とは異なる視点で日常に目を向け、選び出した「思い出」を、他者と交換しながら作品作りをしていく、という内容です。
【1校目】 2017年10月23日(月) 八王子市立高嶺小学校 6年生2クラス54人
テーマ:"あの思い出の宝箱"-他人の思い出を保管する「いれもの」をつくる
事前授業として、こどもたちには、最近一番思い出深かったものを一人ずつ持ってきてもらい、選んだ理由を紙に書いておいてもらいました。
当日は、まず秋山さんから手がけている作品についてご紹介いただきました。
国内外の様々な地を訪れて制作している秋山さんのお話にこどもたちは興味津々。
秋山さんのお話の後はいよいよ制作開始です。
まず最初に行うのは"交換式"。
一人ずつ持参した思い出の品は、紙で覆って見えない状態にした棚に入れてあります。
自分の思い出の品が誰に当たるのか、そして自分は何を引き当てるのか、こどもたちはドキドキしながら紐を引いていきます。
こうして引き当てた誰かの思い出と、それに添えられた文章を良く読んで、思い出の品を保管するための「いれもの」作りを行います。
こどもたちが持ってきた思い出の品は、ソフトボールのコーチからもらったキーホルダー、お兄ちゃんからもらった今は使っていない筆箱、友達からもらった手紙など。
こどもたちは、それぞれの思い出の品にあったいれものを考えて作っていきます。
箱や紙袋などをベースに、コラージュしたり、描いたり、色をつけたりと、工夫しながら制作を進めていきます。
完成したら、「思い出の品からどんなことを感じ、どのように作品を作ったか」を紙に書き、いれものに添えて棚に戻します。
最後に、"返還式"として、「いれもの」に入った自分の思い出の品を受け取りました。
ビー玉を持ってきた子のいれものは・・・
箱の底に迷路が作られており、このビー玉で遊ぶことができます。
静岡で買ったというキーホルダーは、
静岡といえば富士山!ということで、富士山をイメージした箱が作られました。
普段の図工では、"自分の作品"を作ることを意識していますが、誰かのことを考えながら作るという今回の授業は、こどもたちにとって新鮮な体験となったようです。
【2校目】 2017年11月2日(木) 墨田区立第四吾嬬小学校 6年生1クラス26人
テーマ:"あの思い出の宝箱"-他人の思い出を保管する「いれもの」をつくる
こちらの学校でも他人の思い出をしまうための「いれもの」作りを行いました。
こどもたちは、生活する中で見つけた宝物(気になったものや面白いと感じたもの)を事前に持参。
事前授業で、お互いに何を持ってたかを紹介しておいてもらいました。
こちらの"交換式"では、大きな箱が2つ用意され、その中に入った思い出の品を引きます。
自分の思い出の品が入っていない方の箱から一人ずつ紐を選び、引き寄せます。
どんな宝物があたったか、何人かに紹介してもらいました。
お母さんからもらったスマートフォン(紙でできています) や、思い出がつまった帽子。
その他、おばあちゃんからもらったセーターや小学校生活で一番悪い点数だったというテストを持参した子もいました。
思い出の品に添えられた、持ち主の思いをよく読んで、どんな入れ物を作るか考えます。
思い出の品を傷つけないように綿をしきつめたり、相手の好きな色を考えて塗ったり、一目見て気に入ったというキーホルダーは、中が良く見えるように透明のケースに入れたりと、相手のことを考えながら作り進めていきます。
いれものが完成したら、宝物の持ち主に向けたメッセージを書きます。
こどもたち一人ひとりの独創的な発想でできあがった作品の数々。
悪い点数のテストは、暗い色の箱にしまって"封印"。
海外で買ったというカンガルーのキーホルダーは、草や木、花に囲まれた箱が作られました。
学校訪問で取り組んだ作品は、その後さらに手を加え、図工展覧会で展示されました。
(A.T)
(レポート2へつづきます)