2017年11月30日(木)
こどもたちが作った展覧会
スクールプログラム
学校行事のひとつに図工の成果を発表する「展覧会」があります。
通常、教員主導で組み立てられるこの学校内展覧会において、
こどもたちがより主体的に展覧会作りに関わることができないか
と江戸川区立下小岩第二小学校の図工教員から相談を受け、
学芸員による出張授業の一環で、通常の展覧会とは違った
こどもたちによる特別展覧会作りの授業を実施しました。
対象は6年生。授業回数全3回(1回90分、9月21日、22日、10月11日に実施)。
はじめに、学芸員から美術館の展覧会がどのように作られるか、
テーマ設定や、格好よく見える展示方法などをレクチャーしました。
次いで全校児童が制作した作品をくじびきで8グループに配分し、
偶然割り当てられた作品をもとに「物語」というテーマを設定し、
作品を見て感じたことから物語を創作し、並べる順番や展示方法なども工夫し、
実際に自分たちで展示を組み立ててもらいました。
展示場所は多目的室や児童会議室、ランチルームなど学校内の様々な
スペースをフルに活用しました。
はじめはなかなか物語が思いつかないグループもありましたが、
一人ひとりの感想やアイデアをつないでいくうちに物語がふくらみはじめ、
全員なんとか物語つくりは完成。
同時にどのように作品を配置し、展示するか
割り当てられた部屋にある机や壁、備品などを工夫しながら使用して、
丁寧に作品を扱い展示することも心がけてもらいました。
作品の展示ばかりでなく、他学年や保護者にも見てもらうことを考え、
どのような導線が見やすいのか、どんな案内看板があればよいのかも考えてもらい、
そうしたツールも作成してもらいました。
展覧会当日(10月13日、14日)は、こどもたちがそれぞれに物語を
説明しながら作品をみてまわる解説ツアーを部屋ごとに実施し、
保護者からは時折お話の内容に笑いもおきていました。
また自分達の展示部屋にきてもらおうと、
呼び込みを始めるこどもたちも現れ、
この展覧会が自分たちのものであるという意識が
芽生えたようです。
通常の校内展では、学年ごとに一つのテーマ(課題)の作品を
まとめて展示してあるので、全体にうもれてしまってどれも
同じような作品に見えがちですが、今回こどもたちが作った展覧会で
展示されていた作品は一点、一点が物語の中に組み込まれて、
主役になっているので、一つひとつの作品が生き生きと動いて見えました。
授業後のこどもたちの感想には、
「保護者の方や他学年の人たちがたくさん来て楽しんでくれて
やりがいを感じ、苦労したかいがあり、展覧会は成功しました」
「一から展示をしてみることで学芸員さんたちの大変さを実感しました」
「お母さんから『この物語よく作ったね』とほめられたのでうれしかったです」
「学校でやる展覧会は、先生たちがいろいろ考えてつくるので、
その気持ちがわかりました」
「1年生から5年生までがみにきてみんながよろこんでいるのを
みてとてもうれしかったです」
「お客さんの反応がドキドキわくわくでした」
「説明をしている時にお客さんが楽しそうに聞いているのを見て
やりがいがあるなと感じました」
「とても長い間作品をあつかってきて、展覧会をつくる大変さが
とてもよくわかりました」
「一人でやるよりみんなでやったら一人の時より達成感も倍の
達成感になってうれしかった」
今回の授業を通じて、こどもたちは一つひとつの作品に意味があり、
それらを大切に扱うこと、展覧会を自分たちで作ったという達成感や
見る人の反応をダイレクトに味わうことができ充実感がもてたようです。
また学芸員の仕事の苦労なども実感してもらえたようです。
図工担当の教員からは次のような感想をいただきました。
「自分一人だけではなかなか実行に踏み切れないところを
学芸員のプロの知識とアイデア、そして情熱をいただきながら活動できた。
こどもというかたまりではなく一人の作者として向き合うことの大切さを改めて感じた」
こどもたち一人ひとりの学びもさることながら、
通常の授業ではできないこと、または難しいことが、
美術館と連携することで、学芸員のもつスキルを活用し
達成できるということ、そしてこどもたちの作品=一人の作者としての
存在を実感してもらうことができ、今回の授業は
教員にとっても大きな学びとなったようです。(G)