2017年03月31日(金)

アーティストの一日学校訪問(淺井裕介さん)レポート その1

アーティストの1日学校訪問

2001年度から始まった「アーティストの一日学校訪問」。
アーティストとの交流を通じ、現代美術の動向を
感じ取ってもらうことを目的にしています。

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本年度は、収蔵作家の淺井裕介さんをお招きし、
昨年の10月から今年の1月にかけて都内の6校
(小学校5校、盲学校1校)にて実施しました。

淺井さんは、土と水、石と火、テープとペンなど色々な素材を用いて、
様々な場所に絵を出現させ、日常に穏やかな違和感を作り出しています。
今回の授業テーマは「絵が生まれてくる場所は、どこにでもある!」。
普段図工や美術では使わない場所で、普段の授業では使わないものを用いて、
絵を描いてみようという試みです。

淺井さんが授業で取り組んだのが、学校の周りなどで集めた土で描く"泥絵"、
マスキングテープによる"壁画"、そして巨大な模造紙に描かれた"ペン画"でした。
内容別に、各学校での活動をご紹介します。

<泥絵>
【1校目】2016年10月3日 品川区立小山小学校 「歩き出した大地」

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最初に参加してくれたのは、小学4年生の児童65人です。
学校創立90周年を機に、校内の吹き抜け階段の窓に、泥絵を飾ることにしました。
泥絵に使う土は、先生が学校の周りで採取したもののほか、
淺井さんがご自分の制作で集めた国内外からのものも用います。


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まず、淺井さんがご自身の作品を写真で紹介したあと、
泥絵のデモンストレーションを行いました。
次に、こどもたちは1班8人で、それぞれ窓枠の大きさに切った
8枚の不織布を取り囲み、鉛筆で好きな生き物を描いていきます。


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こどもたちの生き物が出来上がると、淺井さんが黄色い土で
その生き物を取り囲むように、大きな生き物を描いていきます。
こどもたちは、自分の生き物の中を、濃い色の土で塗ります。


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次に、今度は濃い生き物の周りを、薄い色の土で彩っていきます。
淺井さんのお手本を見た後、作業開始。
途中でいったん手を止めて、みんなで絵の周りを回って鑑賞します。
全体を見て、どこが足りないのか、どうしたらもっとよくなるかを考えます。


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やがて制作再開。しかし、途中で淺井さんが手を叩いたら、
その数だけ場所を移動して、違う絵の続きを描かなくてはなりません!
他の子たちが描いた線を活かしながら、空間を埋めていきます。
制作終了後、こどもたちからは意見や質問の手が次々と上がりました。


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事後授業では、鑑賞してお気に入りの部分を見つけたり、
友だちと相談して、周りの色を塗ったり、落ち葉をつけたりしたそうです。
校内展示では、こどもたちが通り際に見上げる階段の窓を
大地から歩き出した生き物たちが埋め尽くしました。


【2校目】2017年1月16日 港区立笄小学校 「土の森をつくろう」

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泥絵の授業2校目は、小学5年生61人で行いました。
冬休みの間にこどもたちが集めてきた土や、
学校の近くのお寺や美術館で分けてもらった土が山ほど。
協力してくれた方々に感謝をこめて、会場の体育館に写真が展示してありました。


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先生と主事さんたちが縫い合わせた巨大な不織布が2枚、
体育館に敷き詰められています。
淺井さんはその画面に、1枚は大きなイヌを、もう1枚には大きなトリの
シルエットを描きました。
こどもたちはまず、土を使ってウォーミングアップ。
コップに入った土と筆を持って、画面の上をぐるぐる歩きます。
淺井さんが「ストップ!」と言った場所で止まり、
足元に最初は1つの点、次は2つ、3つと、模様を描いていきます。


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次に、舞台側を天、出入口側を地として絵の上下を定め、
濃い色の土で木の幹を描き始めます。
幹から伸びる枝や、そこから生える葉を5枚、葉柄をきっちり描くようになど、
淺井さんの細かい指示が次々と飛びます。
さらにその幹の根元に、生き物を描いたり、花や小鳥を加えたり。
担任の先生や見学にいらした方たちも加わって、
どんどん画面がにぎやかになっていきました。


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給食・休憩をはさんで、午後は仕上げに入ります。
今度はクラス内を2班に分けて、
1班は淺井さんが描いた生き物の中を、模様を描きながら塗りこんでいきます。
もう1班は、外の部分に描いた線と線の間の面を、
違う色で塗りつぶしていきます。
こうして、巨大なタペストリーが2枚完成しました。

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後日、校舎の表と裏に飾られたタペストリー。
泥絵の中の生き物は、冬空の下でまるで生きているかのように
はためいていました。
(J.O.)

※写真:かくたみほ

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