2016年06月01日(水)

こどもの表現について考える

スクールプログラム
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休館前最後の教員研修会を5月28日(土)に実施しました。
この研修会では、「図工表現の"見せられない世界"」として
こどもの表現について考えることをテーマにしました。

参加したのは、今年4月に教員になったばかりの若手から
10年以上というベテランの都内小学校図工専科の教員13名。

まずは、「キセイノセイキ」展を鑑賞し、展覧会の感想を伺った後、
日頃の図工の授業の中で表出される問題表現や、
教育的配慮から展示できない作品などについて指導上の悩みや
表現の実情について意見交換を行いました。

先生方には実際のこどもたちの作品を持ち寄っていただき、
具体的な表現例を見ながらディスカッションしました。

例えば、既存のキャラクターが描かれた絵、地獄の絵、銃などの武器の表現、
人物のオブジェの画像を細かく切って首だけを並べて構成した絵・・・などなど。

授業そのもののテーマ設定に不備があったという自己反省や、
視点を変えれば受け入れられる表現なのではないかとか、
それらを表現することの何が良くないことなのかをきちんとこどもに伝え、
互いに納得した上で表現させる。
途中で止めさせるのではなく、その後の表現の変化も見ていくことで
その子が何を表現したかったのかを見取ることも大事などと意見がでました。

また、絵で表現できないので文字で説明を描いてしまう、
棒人間(丸を頭にして一本の線で胴体と手足を表現する)しか描かないといった
悩みなどもでました。

一方、こどもから出てきてしまう表現よりも、
学校教育の立場上、周囲からは人権への配慮を促されたり、
社会の目を強く意識しなければならないといった、
現場ならではの事情や苦悩も伺えました。

今回は「キセイノセイキ」にも出品しているアーティストの小泉明郎さんに
ゲストとして研修会に同席してもらいました。
小泉さんはアーティストの立場から、
「作品を作るということはとても個人的なこと、本能や感性の表象世界。
これらが大きくなればなるほど社会と乖離していく」
と語ってくれました。

個人の表現を認めたいとする一方で、法律などの社会の規制がはたらいたり、
学校教育への配慮などが必要なのも現実。

研修会に参加した教員からは、
「図工でやって良い事、ダメな事の判断はすごく難しいと感じた」
「自分自身で規制をかけてしまっているかも」
「表現の良さや楽しさを感じられる図工の時間だが、
それらを外に向けて発表する際には、社会の反応があるのは当たり前で、
その中でうまくバランスをとっている自分がいることに今日気がついた」
「周囲からの指摘に悩むこともあるが、周りを変えていく、変わっていくことも
大事なんだと思った」
などと感想がでました。

表現によってはかなり過激なものもあり、
教員が一人で立ち向かえるほどこどもの表現は軟弱ではないことを
あらためて今回の研修会で伺い知ることができました。
リニューアルオープン後も、継続して教員研修会は実施いたしますので、
教員のみなさま、取り上げてほしい研修テーマがありましたらぜひご相談ください。(G)

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