アーティストの一日学校訪問(関根直子さん)レポート その1
2001年度から始まった「アーティストの一日学校訪問」。
アーティストとの交流を通じ、現代美術の動向を
感じ取ってもらうことを目的にしています。
本年度は、収蔵作家の関根直子さんをお招きし、
昨年の10月から今年の2月にかけて都内の6校
(小学校5校、特別支援1校)にて実施しました。
関根さんは紙と鉛筆という、学校の授業で最も身近な画材で
絵画を制作しています。
しかし、彼女の絵は想定した完成図を再現するのではなく、
"線をどう描くか"という意識に基づく、
音楽にも近い抽象表現を特徴としています。
授業のテーマは「動きや速度をイメージした線の抽象表現―
描く事で自分自身を体験しよう」。
こどもたちの感覚的な記憶から鉛筆を動かしてもらい、
その痕跡として表れる"絵画"を制作してもらいました。
【1校目】2015年10月26日 青梅市立藤橋小学校 「手の動きから作品が生まれる」
最初の授業に参加してくれたのは青梅市立藤橋小学校の6年生37人です。
はじめに、関根さんがご自身の作品を画像で紹介。
さらに、実際の作品も2点持って来てくださいました。
こどもたちは作品鑑賞のマナーについてレクチャーを受けたのち、
関根さんが回って見せた作品を興味深そうに眺めていました。
さて、いよいよ制作開始です。
4、5人1班で、ひとつの大きな画用紙に"何も考えずに"
自由に線を描いてもらいました。
普段とは違った描く方法に戸惑いながらも、不思議と勢いよく
こどもたちは画用紙に自在に鉛筆を走らせていきます。
次の画用紙には、"何かをイメージしながら"線を描いてもらいました。
無意識に描くことと、意識的に描くときの違いを感じながら、
「手の動きから作品が生まれる」ことを関根さんは伝えたかったそうです。
出来上がった絵を集めて、ひとかたまりに並べてみると、
さらに大きな"絵画"が出来上がりました。
【2校目】2015年11月13日 足立区立足立入谷小学校 「線のバリエーションを広げる」
訪問授業2校目は、足立区立足立入谷小学校3年生30人で行いました。
この日、関根さんはあらかじめ画用紙に描いたドローイングを持参されました。
まずは、小学3年生にもこれからの制作が理解できるように、
そのドローイングに線を足すデモンストレーションを行いました。
こどもたちが班ごとに分かれて画用紙に線を描き始めると、
関根さんはご自分のドローイングをはさみで切り分け、
それを各班に配り、2か所すきな位置に貼ってもらいました。
作家の描いた線をきっかけにして、こどもたちはその線のバリエーションを
さらに広げていきました。
班ごとの絵が仕上がると、いくつかの班の絵を持ち寄って、
絵と絵の間に新しい紙を挟み、さらに線をつなげていきます。
最後には、全部の絵を2列に並べ、体育館の壇上からみんなで鑑賞しました。
(J.O.)
(その2へつづきます)