手話ナビゲーターとめぐるギャラリークルーズ
12月13日(土)、聴覚障害のある方もない方も参加できるツアー、
「手話ナビゲーターとめぐるMOTコレクションギャラリークルーズ」を開催しました。
聴覚障害のある方10名、ない方11名の計21名が集まりました。
本企画は「美術と手話を考える会議」の皆さんのご協力の下、準備を進めてきました。
このツアー最大の特徴は、「手話ナビゲーター」の存在。
いわゆる通訳者とは少し異なる、独特な役どころです。
音声や手話で、参加者同士のコミュニケーションサポートをしつつ、ツアーを進行します。
今回は「美術と手話」メンバーであるお二人の手話通訳士が務めました。
2グループで、MOTコレクション(常設展)の4つの作品を鑑賞。
音声や手話、身振りなど、様々なコミュニケーションの方法で鑑賞を行いました。
また、各作品に一つずつ、鑑賞の"手話キーワード"を紹介しました。
藤本由紀夫《EAR WITH CHAIR(MOT)》での手話キーワードは〈おと〉。
まずは各自、パイプ状の作品を耳に当てて作品を体験。
聞こえてくる音や振動など、体験して得たイメージをジェスチャーで表現しました。
参加者の感想:
「あえて聞く作品で驚いたが、振動や皆のジェスチャーなどで伝わることも沢山あった。」
「〈おと〉が聞こえたので、体中がひびくような感じがした。」
続いて、デジタルカウンターが明滅する宮島達男の作品。
ここでは、自分の身体を使って作品とリンクすることを試みました。
手話キーワードは〈脈〉。
1から9までのカウントを繰り返し続ける無数の数字は、そのスピードも様々。
各自、脈を取りながら作品と向き合い、自分の脈と同じスピードの数字を探しました。
手話ナビゲーターの合図で、一斉に自分の見つけた数字を指差し!
参加者の感想:
「キーワードが全く想像もつかないものだった」
「視覚的に楽しめた」 「自分に身近な感じがしました」
アンディ・ウォーホル《マリリン・モンロー》の手話キーワードは〈表情〉。
参加者に、一枚ずつ表情のマークが描かれたカードが配られます。
それぞれの表情カードは、笑っていたり、泣いていたり、怒っていたり...
カードの表情にもっとも当てはまると思う、マリリン・モンローを選んでもらいました。
その後、選んだ理由をグループ内で話し合い、互いの見方を共有しました。
参加者の感想:
「自分の気持ちや好みにハッと気づいた。自分を顧みることのできる鑑賞ってすごいと思った」
最後の、サム・フランシスの抽象絵画は、2グループ合同で鑑賞しました。
手話キーワードは〈一緒〉。
各グループ、全員で協力して作品を身体で表現しました。
ツアーを締めくくる即興パフォーマンスとなりました!
参加者の感想:
「身体を使ってみると作品が違って見えてくる。その不思議さを体験できて良かった」
「初めて会った方々と話し合って身体表現。障害に関わらず作品として全員で表現できた」
最後に、参加者の皆さんには記念品として"特製しおり"をプレゼントしました。
ツアーで登場した手話キーワードのイラスト入りです。
4つの手話、ぜひ覚えて使っていただければと思います。
終了後、参加者の皆さんからは、
「手話を通して、ろう者も含め、様々な見方ができる楽しみに気づくことができました」
「ワークショップ風で刺激になりました。楽しかったです!!」
「他者の存在を認めることは人の暮らしやすさにつながる。そういったことをグループワークを通してあらためて実感した」
「きこえる、きこえない関係なく参加できるところにも意義があったと思う」
「手話ができない人は参加者同士のコミュニケーションが難しそうだと思った。筆談用のボードを配っても良いと思った」
など、たくさんの感想・ご意見をいただきました。
様々な立場の人が集うことで生じる創造的な営みを大切にしつつ、
今後も、多くの方に楽しんでいただけるよう、企画に取り組んでいきたいと思います。
(G.I.)