2014年03月02日(日)

「井戸端鑑賞」-オリジナル音声ガイドをつくろう!

ワークショップ

3月1日(土)と2日(日)、春のワークショップ2014として、
『みえる人とみえない人の「井戸端鑑賞」―オリジナル音声ガイドをつくろう!』
を開催しました。(同一内容で2日開催)
企画・指導は、「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」の皆さん。
様々な美術館で鑑賞会を自主開催しているグループです。
当館では初めての、目のみえる人とみえない人が共に楽しめる美術鑑賞を
テーマにした取り組みとなりました。

AM10:30 「清澄白河」駅集合、歩いて美術館へ

当日の集合場所は、美術館の最寄駅の地下鉄「清澄白河」駅。
3チームに分かれて、皆で歩いて美術館へ向かいます。

道端に不思議な形のオブジェを見つけ、話が盛り上がるチームも。
こういう時、自然と会話が弾むように、美術鑑賞も楽しもう!
というのが「井戸端鑑賞」です。

AM11:30 展示室で「井戸端鑑賞」を体験

美術館に到着後、常設展示室で「井戸端鑑賞」を体験。
約8名ずつ(うち、みえない人1~2名)、3チームで巡りました。
各チームにナビゲーター(視覚に障害のあるスタッフ)1名と、
サポートスタッフ(晴眼者)1名が同行し、会話を促しました。

作品のサイズや形状といった「目に見えるもの」だけでなく、
印象や感じたこと、連想したことなどの「目に見えないもの」も
話題にしていくことで、「井戸端鑑賞」は、より充実したものに
なっていきました。

参加者の中には、聴覚に障害のある人も。
手話通訳と要約筆記によって会話を補助しました。

PM1:30 「オリジナル音声ガイド」の編集

昼休憩をはさんで、午後は、各チームの編集室に分かれ、
「オリジナル音声ガイド」の制作です。
「井戸端鑑賞」での会話を録音した音声を素材に、鑑賞者の
"生の声"を伝え、"他人の見方"を知ることができる音声ガイドを
編集・制作しました。

編集プロセス① 【鑑賞を振り返る】 (写真左)
 まずは、記憶をたどる話し合い。印象的なトピックや発言を思い出します。
 誰に向け、何を伝える音声ガイドにするか、編集方針についても話し合います。
編集プロセス② 【構成を考える】 (写真右)
 記憶に残っていた発言やトピックを、吹き出しカードに書き出します。
 吹き出しカードを分類し、トピックのかたまりをつくり、大まかな構成をつくります。

編集プロセス③ 【音の切り出し・記憶の拾い上げ】 (写真左)
 パソコンの編集ソフトを使って、録音した音声を聞きながら、使いたい会話を
 切り出していきます。作業はオペレーターがサポート。
 また、ここでは、記憶から漏れていた、面白い発言も拾い上げます。
編集プロセス④ 【微調整】 (写真右)
 一度通しで聞き、トピックの順番の入れ替えや、追加、削除などを行います。
 最終的には、約6分の内容に編集することを目指します。

わずか2時間半での編集は、かなりハードでしたが、皆、作業に熱中!
「想像の余地を残すため、あえて全てを語らない音声ガイド」や、
「会話が弾む楽しさをお裾分けする音声ガイド」などなど、
趣向を凝らした、ユニークな「オリジナル音声ガイド」が生まれました。

PM4:00 音声ガイド発表

最後は、スタジオで発表会。
各自に音声端末を配り、全チーム分の音声ガイドを聞きました。
スクリーンに投影された作品写真をじっと見つめながら聞く人、
そっと目をふせて、頭の中に作品像をイメージしながら聞く人...。
みえる人とみえない人が共につくりあげた、「オリジナル音声ガイド」が完成しました!

参加者の感想には、
「会話の自然の流れをまとめるとストーリーがそこに生まれていたことに感動した」
「自分では当たり前だと思っていた感想が、個人的なものだと気づかされた」
「他の人が、このガイドを聞いてどのように感じるか知りたい」
「井戸端鑑賞のネーミングがよく合っていると感じました」
などがありました。

今回のワークショップは、他人の互いの見方、感じ方に触れ、
想像を膨らませながら楽しむ美術鑑賞の魅力を、みえる人もみえない人も
一緒になって共有できる機会となりました。
(G.I.)

写真:中島佑輔

※完成した「オリジナル音声ガイド」をウェブ公開しています
詳細は、下のイラストをクリック↓
(教育普及プログラム「活動報告」ページに移動します)

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