2008年03月16日(日)
《明日の神話》の修復家
MOT美術館講座
今日、第三回目となるMOT美術館講座「生きている太郎」に
登場してくださったのは、
《明日の神話》を修復された吉村絵美留さんでした。
岡本太郎がこの作品を描いてから37年。
長らく行方不明だったこの壁画が発見された時は、
損傷も激しく、汚れも相当にひどかったようです。
写真を見るとまさに満身創痍の状態。
その巨大壁画を1年以上もかけて丁寧に修復し、
今、私たちが目にしている色鮮やかなものに蘇らせた
その人が、修復家の吉村さんでした。
メキシコの高温、低湿度の中での解体作業の様子や、
四国でのパーツの接着作業・・・そして超純水による洗浄。
一つ一つ写真を使ってのお話は、
まるでスペクタクル映画を見ているようでした。
私が一番驚いたのが、
《明日の神話》の全面に残っている描き直しの跡のお話。
吉村さんに指摘されなければわからない微かな痕跡です。
炎の先や、きつねのような動物の足など・・・。
岡本太郎はその瞬間の勢いで即興的に絵を描いているかのような
イメージがありますが、
こんなに細部を描き直しているのは意外でした。
岡本太郎の鋭いバランス感覚と繊細なこだわりが、
ひたひたと伝ってくる事実です。
みなさんもぜひ今度、本物で確認してみてください。
吉村さんの講演を聞き逃してしまった方は、
ぜひその著書
『岡本太郎「明日の神話」修復960日間の記録』(青春出版社)を
どうぞ!(C.M.)