「新たな系譜学をもとめて」展 系譜学モデルコース
現在開催中の「東京アートミーティング(第5回)新たな系譜学をもとめて-跳躍/痕跡/身体」展では、鑑賞の手助けになるようモデルコースをご提案しています。
1「型」をたどって
(1)野村萬斎 (3)ダムタイプ(13)ダグラス・ゴードン&フィリップ・パレーノ
600年の歴史のある狂言の「型」をインストールした野村の身体は、それゆえに自由に異種交流し、新たな表現をうみだします。従来の演劇や映像のインスタレーションの「隙間」から新たな「型」をつくりだしたダムタイプ。古代の球を蹴るというシンプルな遊びから始まり、発展してきたサッカーも同様に「型」の進化、洗練、変容として見ることができます。
2 テクノロジーと身体
(3)ダムタイプ(7)チョイ・カファイ(12)デンツウ ラボ トウキョウ&ライゾマティクス
テクノロジーによってスキャンされ、デジタル化される身体のイメージを表現した、パイオニアとしてのダムタイプ。彼らから影響を受け、ダンサーの動きをデジタル信号に変換したのがチョイ、スポーツ選手の素早い動きや身体の変化を、センシング、画像解析などのテクノロジーを駆使して捉え、新たな視覚イメージに変換したのがデンツウ ラボ トウキョウ&ライゾマティクスです。
3 コラージュ、パッチワーク
(2)アンリ・マティス(4)ノア・エシュコル
マティスは本作品《ダンス》の下絵のために切り絵を用いました(※)。大胆な色とフォームのコンポジションをうみだした方法は、エシュコルのパッチワークにも影響を与えました。大きく異なる点は、エシュコルが端切れをそのままに使ってコレオグラフィー(構成)の妙で制作したことです。
※アンリ・マティス《ダンス》の展示期間は9月27日から11月16日まで。
4 日常性のコレオグラフィー
(4)ノア・エシュコル(9)チェルフィッチュ(17)大植真太郎+森山未來+平原慎太郎
エシュコルは日常的な動きを身体の部位の3つの回転に置き直して記譜法をつくりました。それはシンプルな動きの組み合せでありながら、身体の動きが実に多くの可能性をもっていることを示しています。チェルフィッチュは若者たちの日常的な仕草、だらしなく投げやりにも見える振る舞いを巧みに振り付けとして様式化しています。日常的な家電を主題とした金氏徹平の彫刻はポストインターネット世代らしく有機的で不定形な形のまま、あらゆるものとつながっていきます。日常やアンフォルメルやもっと遠い過去の原始的な形にも系譜を辿ることができます。また、3人のダンサーによるユニット、大植真太郎+森山未來+平原慎太郎がインターネット上で見つけた、日常の中で目にするさまざまなものの動き、ビニール袋や海中のイカなどをダンスに見立て、ダンスの可能性を問いかけています。
5 身体ドローイング
(6)エルネスト・ネト(8)「具体」の作家たち、ジャクソン・ポロック、サイ・トゥオンブリー (11)インバル・ピント&アブシャロム・ポラック・ダンスカンパニー(16)ジュリー・メーレトゥ
ネトの作品でモティーフとなっている南米の先住民の儀礼は、超越的なものとの出会いを目的としています。彼らの文化に息づいている精神の高揚、浄化の作用は、「具体」の作家たちやジャクソン・ポロック、サイ・トゥオンブリーの絵画に共通するものです。インバル・ピント&アブシャロム・ポラック・ダンスカンパニーのパフォーマンスと、絵画との密接で生き生きとした関係は、新作ダンスに最もよくあらわれています。
6 様々なアーカイヴ、歴史の継承
(1)野村萬斎(5)シャロン・ロックハート(4)ノア・エシュコル(7)チョイ・カファイ(15)資料展示
パフォーマンスという時間芸術を形として伝えるアーカイヴにはいろいろな形があります。映像や写真、資料やデータ、さらにアーカイヴそのものをインスタレーションとして提示する作品、デジタルな学習装置など。本展覧会では異なったアーカイヴの形を展示することで、未来に向けて身体知の遺産を継承する方法を模索します。
7 レイヤー化する情報、記憶
(12)デンツウ ラボ トウキョウ&ライゾマティクス(16)ジュリー・メーレトゥ
情報のレイヤー構造は、現代的な情報処理と、新たなクリエイションの方法論として注目されています。メーレトゥの絵画の新しさは、建築のドラフト、水墨画のような筆致、画面をシャープにカットしていく線などのレイヤーが重なりあい、それぞれが社会性や個人的な内的世界の層を表していることです。デンツウ ラボ トウキョウ&ライゾマティクスの情報分析と視覚デザインもまた、多くの緻密なレイヤー処理によっています。